いやいや仕事をする部下でも、叱ってはいけない
営業の新規開拓のための電話でのアポ取り、情報収集のための新聞記事の切り抜き、会議の議事録取り……。どんな会社でもある、新人や若手が「仕事を覚えていくためにやる基礎的な仕事」。部下はそれを、つまらなそうに、やらされ感満載でやっていることが多いはずです。そんな姿を見ると、「これは仕事の基本なんだからやれ!」と、上司は叱りたいところ。でも、それは逆効果です。どんな仕事でも、意欲を持ってやってこそ成果が出ます。叱るよりも、部下に意欲を持たせることに力を注ぎましょう。
「そんなことは無理」と思うかもしれません。しかし、上司がたった3つのことを考えるだけで、部下がつまらないと思う仕事にすら、真剣に取り組むようになるのです。
1:その仕事は、組織の「大切なこと」と結びついているか
そもそも、部下はなぜその仕事をつまらないと思うのでしょう? その仕事に意味を感じないし、その仕事が自分の出すべき成果や、目指す目標と合致していると思えないからです。そういう基礎的な仕事は、本当に意味がないのでしょうか? 実際には、その部署に綿々と受け継がれている若手に任せる仕事は、たいていその組織が成果を出すために「大切なこと」と深く結びついているものです。まずは、「大切なこと」と部下が担う仕事が本当に結びついているか、上司は考える必要があるでしょう。
たとえば、私が監督を務めていた早稲田大学のラグビー蹴球部では、練習の基本の基本は「走る」ことでした。早稲田の場合、選手の体つきが比較的小さく、体の大きな選手とまともにぶつかりあっても勝てない。だから、素早く動き、相手を先んじるという勝ち方を「大切なこと」と定義づけ、「走る」ことを基礎練習の中核に据えていました。
企業の場合、新規開拓のための電話でのアポ取りは、営業の基本として新人がよくやる仕事であり、また、部下がいやがる仕事のナンバーワンです。部下にしてみれば、「コンサルティング営業みたいなカッコいい仕事をイメージしていたのに、なんで毎日こんなことの繰り返しなんだろう?」と、理想と現実のギャップを感じたりするのです。
しかし、その会社の成長の源が、「1つ1つの小さな取引を大切にする」ことなのだとしたら、「小さな取引」を始めるための電話でのアポ取りは、欠かせない仕事です。そういう風に、きちんと結びつくのか、上司自身がまずは考えてみましょう。