ベルギー/ブルージュ

キリスト教遺産を巡るブルージュ(2ページ目)

「天井のない美術館」と異名をとるブルージュには、どこを見ても、キリスト教建築やキリスト教芸術などが溢れています。信者でなくとも、多少の予備知識をもち、心の目を一杯に開いて、歴史や芸術をゆっくりと感じていただきたいものです。

栗田 路子

執筆者:栗田 路子

ベルギーガイド

聖血礼拝堂

外観は市庁舎につながっている

バジリク(聖血礼拝堂)

ブルージュの中心部、ブルグ広場にある市庁舎の右側につながったように見える建物がバジリクで、日本語ガイドブックなどでは「聖血礼拝堂」とされています。その名は、キリストが流したとされる血のついた羊の革の入った聖遺物が奉納されていることに由来。そのことからローマ法王によって、「普通の教会」より上位の教会として特権を与えられた「バリジク」とされています。

この「キリストの血」聖遺物は、第2次十字軍に従軍したフランドル伯ティエリー・ダルザスが聖地エルサレムから持ち帰り、1150年にブルージュにもたらされたと言われており、毎年、復活祭から40日目のキリスト昇天祭には、それを再現するイベント「聖血の行列」が盛大に行われます。

ブルージュのバジリクは2階建てで、1階部分は12世紀に建築されたロマネスク様式。1300年に作られたという聖母子像や、キリスト教社会では父性愛を象徴するペリカンの像などが見られます。2階は19世紀に再建築されたネオ・ゴチック様式で、入り口右手には宝物館があります。2階建ての聖堂は今日では珍しく思いますが、昔はよくあることだったそうです。

「キリストの血」聖遺物は、毎日のように開帳され、拝詣することができますが、その時間などは入り口に書かれているので要確認。2階部分への入り口に行列ができていれば、それは参拝者の列なので、そのつもりがなければ、脇をすりぬけてバジリカのみ見ることができます。遠方から、この聖遺物を拝むためにはるばるやってくる敬虔なキリスト教徒も多く、西洋史そのものともいえるその入れ物に接吻し泣き崩れる信者の姿を目の当たりにすると、あらためて宗教や歴史について考えさせられてしまいます。

ブルージュで地元の人々とゆっくり接し、話す機会があれば、フランス軍やドイツ軍の手から、この宝を守るために、市民が必死で回し隠して来た逸話などをあちこちで聞くことができます。

<DATA>
Basiliek(聖血礼拝堂)
住所:Burg 13, 8000 Brugge
開館時間:10月15日~3月31日 10:00~12:00/14:00~17:00(水曜日午後閉館)、4月1日~10月14日  9:30~12:00/14:00~17:00
入場料:礼拝堂は無料、宝物館2ユーロ


聖ドナティアン大聖堂跡

ブルグ広場、市庁舎の反対側の広場

聖ドナティアン大聖堂跡地

ブルグ広場に隣接して、大きな木々の立つ広場があって、なぜこんなところに広場が?と感じるかもしれません。この周囲には、かつて、聖ドナティアン大聖堂(St Donaaskathedraal)という、ブルージュで最も古く、最も大きな教会で建っていました。そもそもはロマネスク様式で10世紀に建立され、16世紀に司教座が置かれて大聖堂となりました。しかし、18世紀終りに、ベルギー中の多くの教会や修道院と同様に、フランス革命の嵐によって破壊されてしまいます。今でも、その土台の一部が、広場の脇に立つホテルの地下に保存されているので、特別のイベントなどがない時ならいつでも、ホテル1階奥にある階段を降りて見ることができます。

ブルージュをこよなく愛してここに住んだ善良公フィリップ(突進公シャルルの父)の亡骸は、当初、この教会に納められていましたが、その後、シャルルによってブルゴーニュに移されたそう。また、その宮廷画家として活躍した初期フランドル派の天才ヤン・ヴァン・アイクが埋葬されたのも、この教会だったそうです。
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