娘の家庭は、娘夫婦で切り回すのが原則
育児は重労働。だからこそ若干でも報酬を配慮したいもの
本来、結婚して自立した後の家庭生活は、本人たち夫婦が話し合い、工夫しあって切り回していくもの。まずは、娘夫婦が自分たちの力で最大限チャレンジし、ワークスタイル、ライフスタイルを工夫する。それでも、どうしても難しい部分を実家にサポートしてもらう、というように、娘世帯と親世帯との境界線を引くことが大切です。
また、老母のサポートを利用する際には、お金を払ってお礼をするのも大切なことです。本来、ファミリーサポートセンターに子育て支援を依頼すれば、時給700円、800円といった利用料が発生します。もちろん、家族のサポートを時給制にするのは世知辛すぎますが、月に1回は若干でもお礼をするなど、娘の側から配慮したいものです。娘が気が利かないなら、老母が「少しは、子守り代を負担してちょうだい」などと、はっきり請求してもいいのです。
家族だからこそ「はっきり伝えあう」習慣が必要
家族だからこそ、お互いの気持ちと考えをはっきり話し合うことが大切
先に述べたように、母が「これだけ娘に尽くしているんだから、いずれは恩返ししてくれるだろう」と漠然と期待する一方で、娘は「私は母自慢の孝行娘。孫の世話で生き甲斐まで作ってあげている」と感じているなど、人はそれぞれ自分の都合のいいように考えているものです。こうした誤解を回避するためにも、お互いの考え、気持ちをはっきりと口に出す習慣を、家族それぞれが身につける必要があります。
「はっきり口にすると、ケンカ腰になるのでは?」と躊躇する人がいますが、それは、ギリギリまで不安や怒りを溜め、攻撃的になってしまうからです。そうならないためにも、疑問を感じた時点で「これは困るので、こうしたい」「このままでは苦しいので、こうしてはどうだろう」というように、「気持ち」と「提案」をセットにして伝えることが大切です。
初老は、セカンドライフを充実させる大切な時期
自分のセカンドライフを楽しむことが、高齢期の「精神の自立」につながる
自立には、経済面、生活面、健康面だけでなく、「精神面での自立」も要です。身近にいる家族だけに依存せず、外で友人と関わり、さまざまな活動に取り組むことが、精神的な自立を促します。
そして、仕事優先で家庭を母に頼り切っているキャリア娘に、「生活面での自立」を諭していくのも、老母の大切な仕事。一家を持って自立したのなら、自分の家庭は最大限、夫婦の力で切り盛りしていく。困難であれば、ライフスタイル、ワークスタイルを調整するなど、工夫していく。それでもサポートが必要なときに、実家がバックアップする。手を出しすぎず、娘の自立を見守っていくことは、老母だからこそできる仕事ではないかと思います。
日本は働く母親をバックアップするシステムが脆弱なため、どうしてもフルタイムで働く女性の負担が、大きくなってしまいます。そこで、老母という「内助の功」が欠かせなくなるのですが、この初老の時期は老母にとっても、精神と生活を自立させていく大切な時期なのです。母と娘それぞれが境界線を意識しつつ、ピンチのときには助け合う。こうした節度のある関わり方が、自立した母娘関係を続けるために必要なのだと思います。