小野さんが今まで観た中で最も心に残っている白鳥といえば?
小野>ウリヤーナ・ロパートキナの白鳥。もう、白鳥そのものなんですよね。それでいて、心が見えるというか。白鳥の場面って照明もヒンヤリして音楽も哀しい感じだけど、ロパートキナの白鳥は冷たい雰囲気ではなく、なんだかとても温かい気分になる。『白鳥の湖』に限らず、ロパートキナは大好きです。以前彼女が世界バレエフェスティバルで踊った『瀕死の白鳥』も大好きで。“あ、死んじゃった……”なんて、思い入れたっぷりに観てました(笑)。新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』
2012年公演より 撮影:瀬戸秀美
小野さんが目指す白鳥像とは? どんな白鳥をみせたいですか?
小野>オデットの心をしっかり感じてもらえることができたらな、というのはいつも思っています。『白鳥の湖』は、よほど心が見えないとお話が成立しない。例えばストーリーを全く知らないで観に来たとき、“あれ誰?”“今何が起こっているの?”となってしまう危険がある。だけどもし内容を知らなくても、“あ、恋に落ちたんだ”とか、ちゃんと伝えることができたらと……。もちろん踊り自体を見てもらわなきゃいけないんですけど、できれば“どんな踊りしてたっけ?”って後で思えるような、“踊りがステキだった”よりドラマを楽しんでもらえる舞台にしたい。その作品自体を“何かよくわからないけど良かったな”と感じてもらえるようにしたいと、いつも思っているんです。
新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』2012年公演より 撮影:瀬戸秀美