極夜の季節と言えども、ヘルシンキとラップランド地方では日照時間に大差あり
11月初旬のラップランドは、お昼12時でもこの太陽の低さ。14時には完全に地平から去ってしまう。フィンランド最北部で太陽がまったく昇らなくなるのは、11月終わりから1月半ばにかけて
極夜と言われても、実際にどんな世界が巡ってくるのか、体験してみないことには想像もつかないでしょう。まず知っておきたいのは、北国フィンランドと一口にいえども、南端に位置する首都ヘルシンキと北極圏内にあるラップランド地方とでは、同日の日照時間はまったく異なるということ。例えば11月下旬および1月下旬では、ヘルシンキでは7時間近くも日照時間が確保されるのに対し、ラップランド地方の北端部では、日照時間が1時間を切ってしまいます。フィンランドの国土は縦に長いので、秋分の日を過ぎると、北上するほど驚くべき差で日照時間が縮まってゆくのです。
太陽こそ出ないものの、あたりがぼんやりと青白さにつつまれるカーモスの時間
ちなみに北半球で太陽高度がもっとも低くなる冬至の日(例年クリスマス直前)でも、ヘルシンキでは6時間弱、緯度が国土の中間にくる街で4時間あまり、太陽が地平から顔を出します。とはいえ、ほとんど水平線近くを平行移動するだけの冬の太陽は、真昼でも黄色みを帯びていて暖かさは感じられず、夕方のように足元に長い影をつくります。
いっぽう、冬至にまったく太陽が出ないエリアを「北極圏」と呼ぶ定義のとおり、ロヴァニエミ以北の北極圏(ラップランド地方)では、緯度に応じて冬至前後1日から最大2ヶ月近く、太陽が1分も昇りません。けれど冬至を過ぎてからは、再び日に日に太陽が高度を盛り返してゆき、春分の日にはフィンランド全土で日照時間が一律ちょうど12時間まで回復します。
太陽が顔を出さないからといってすぐに真っ暗闇が訪れるというわけではありません。日本でも日の出や日没の前後にはだんだんと空が白んできて朝焼けや夕焼けが見られるように、極夜のラップランドでも、日中はある程度空がぼんやりと明るくなる時間が訪れます。この、澄んだ大気が幻想的なブルーあるいは桃色の光を帯びる美しい時間帯のことを、フィンランドに住む人たちは「カーモス(Kaamos)」と呼び崇めます。
クリスマス前後1ヶ月は、屋外行動時間がぐっと狭められるので注意
明るいうちにウィンターアクティビティが楽しめる時間帯は一日ほんのわずか
このように、南北で程度の差はあれど、冬場はいかに明るい屋外での観光やアクティビティ時間が制限されてしまうかがおわかりかと思います。暗くなるほどせっかくの写真撮影も困難になるので、どうしても明るいうちに見ておきたい観光スポット巡りや、犬ぞりなどのアクティビティは、何よりも優先して、白昼時間帯に予定を組んでおく必要があります。
クリスマスシーズンは、暗くなってからの街のライトアップも見もの!
逆に、例えば
サンタクロース村でのサンタさんとの面会や、
美術館・博物館見学など、室内での観光やショッピングに関しては、外が暗くても差し支えない早朝や夕方に回したほうが、1日を通して時間が効率良く使えるというわけです。また、とりわけクリスマスシーズンには、各街でイルミネーションやクリスマス市が並びますが、これらをムーディに楽しむならば、断然日が落ちてあたりが暗くなってから! スキー場はナイター営業もしています。そしてもちろん、オーロラ鑑賞も暗くなってからが本番!
このように、暗い時間が多いことをネガティブに捉えるのではなく、暗いからこそ楽しめることが都会にも自然世界にもあるのだ、と認識すれば、冬の旅もぐっと充実度が増してくることでしょう。
積もった雪を利用した窓辺のキャンドルライト
ただし、冬場は夏に比べて、どうしても身体が目覚めにくく疲れやすいもの。マイナス気温のなかで活動を続けていると容赦なく体力が奪われていきますし、まだ外が暗いうちに迎える朝は、身体が活発に動くようになるまで時間を要します。冬の旅行中は、あまり予定をつめ込まずに、できるだけゆったりと過ごす心がけもまた大切といえるでしょう。
当のフィンランド人たちも、冬場は夏に比べてずっと活動量が減り、外が暗くなったら家にこもって暖炉に薪をくべたりキャンドルを灯し、外の雪景色を眺めながら読書にふけったり編み物に精を出したり……と穏やかに過ごすことを好みます。また、冬場のサウナは凝り固まった身体をリフレッシュするのに欠かせない時間です。
最終ページでは、暗いフィンランドの冬に不可欠な便利グッズを紹介!