モンティ・パイソン ある嘘つきの物語 ~グレアム・チャップマン自伝~
「モンティ・パイソン」をよく知らない方でも、その名は聞いたことがあると思います。70年代にはテレビ東京で吹替え版が放送されたこともあり、日本でも根強いファンがいると思います。1969年からBBCで冠番組『空飛ぶモンティ・パイソン』が放送され、世界的な人気を博した英国のコメディ集団「モンティ・パイソン」は、シュールだったり過激だったりする作風で一世を風靡しました(『サウスパーク』や『ザ・シンプソンズ』などは大きな影響を受けています)。『未来世紀ブラジル』のテリー・ギリアムがメンバーだったことでも知られていますが、何と言ってもフロントマンのグレアム・チャップマンの奇想天外なひらめきが、モンティ・パイソンの面白さを決定づけていました。
グレアムは1989年、奇しくも結成20周年の前日に没し、これを機にモンティ・パイソンは解散状態となりました。が、2011年6月には、チャップマンの自伝「A Liar's Autobiography(ある嘘つきの物語)」がアニメーション映画化されることが発表されました。
できあがった映画は、世にも奇想天外な作品になりました。グレアムの原体験はドイツ軍の空爆で死体だらけになった街の光景だったこと、雨ばかりの鬱屈とした英国の退屈な家庭に生まれ育ったこと、といった生い立ちも描かれていましたが、大半はグレアムのセクシュアリティに関することでした(ビックリ仰天!)
高校時代までは女の子と寝たりもしていましたが(でも想像してるのは男の子)、やがて自分はゲイだと確信するようになり、スペインのイビザで運命の人・デヴィッドと出会います。そしてグレアムは、1967年に自宅で「カミングアウト・パーティ」を催しました。そして1970年代にはTVのトークショーでカミングアウトします。その番組を観ていた母親はショックで泣きじゃくり…(父親は「まあいいじゃないか。母さんはカタすぎるんだ」と言っていました)
そして、大勢のゲイたち(ビレッジピープルみたいな。ていうか、まさにその時代ですね)がゲイのセックスを礼賛する歌を合唱したり、街中でダンスしたり、みたいなシーンもありました(本当にエキセントリックでファンタジックでクィアで、拍手したくなるシーンでした)
「新約聖書の失われた断片『ニュージーランド人への手紙』」という作品も傑作でした(「正しい」セックスを、同性愛を賛美する内容。神様は鷹揚で、聖職者みたいに偏狭じゃないよ、という感じ)
実はゴトウもよく知らなかったのですが、有名人がほとんど誰もカミングアウトしていなかった時代に、あそこまで堂々とあけっぴろげに自身のセクシュアリティをさらけだし、人々に影響を与えたグレアムは本当にスゴい人だと思います(あとで知ったのですが、ゲイ解放運動にも参加していたそうです)
2週間限定公開だそうなので、ぜひお早めにご鑑賞ください。
『モンティ・パイソン ある嘘つきの物語 ~グレアム・チャップマン自伝~』
2012年/イギリス/監督:ビル・ジョーンズ 、ベン・ティムレット、ジェフ・シンプソン/出演:グレアム・チャップマン、ジョン・クリーズ、テリー・ギリアム、テリー・ジョーンズ、マイケル・ペイリン、キャロル・クリーヴランド、キャメロン・ディアスほか/新宿ピカデリーにて上映中、12月7日よりなんばパークシネマにて2週間限定上映