子育て/子供とテレビやゲーム・アニメの影響

子どもとゲーム、正義の味方なら暴力は許される?(2ページ目)

子ども達が大好きなゲーム。親としては、楽しいのは大いに結構、でも悪い影響は避けたいですよね。特に、暴力シーンが多く出てくる格闘ゲームについては、どこまでOKなのかと迷います。ゲームとの上手な付き合い方について、ルクセンブルクでの研究結果とともにお伝えします。

佐藤 めぐみ

執筆者:佐藤 めぐみ

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演じたキャラクターの影響を受けやすい

ゲーム後、学生達はパソコンのスクリーン上に並ぶ沢山の顔写真を見て、
  • どの顔が
  • どの程度敵意をいだいているか
を格付けしました。写真には、誰が見ても怒っていると感じる表情のものもありましたが、ここでの目的は、「普通の顔」にどれだけ敵意を感じるかというものでした。

結果として分かったのは、
ジョーカー役でゲームをした学生の方が、スーパーマン役の学生よりも、普通の顔に敏感に反応し、「敵意がある表情」とみなす傾向が強かった
ということでした。そして、同じ役の中でも、生い立ちを聞いたか、聞いていないかで敵意の示し方に差が出ました。それは大変興味深いもので、
スーパーマン役では、生い立ちを聞いたグループの方が、聞いていないグループよりも敵意を示す傾向が低かったのに対し、ジョーカー役では、生い立ちを聞いたグループの方が、聞いていないグループよりも敵意を示す傾向が高かった
のです。つまり、自分が演じたキャラクターの生い立ちの「質」により、攻撃性を上げることもあれば、下げることもあるというわけです。スーパーマンのほほえましい生い立ちは、ポジティブな共感を促し、ジョーカーの悲惨な生い立ちは、ネガティブな共感を加速させてしまったのですね。

 

さらに実験は続く

その後、学生達は実験室から開放されましたが、実は、実験はなおも続いていました。施設内の廊下に、切手が貼られ宛先も書かれた手紙(つまり、あとは投函するのみ)をあらかじめ落としておき、学生たちがどのような行動を取るか観察したのです。

ここでの結果も、実験で割り振られた配役が大きく影響しました。スーパーマン役をやった学生の方が、ジョーカー役の学生よりも、「拾ってポストに投函する」「拾って実験者に手渡す」という善意ある行動を取る傾向が強かったのです。その差は、なんと6.2倍でした。

 

正義のためなら戦ってもOK?

このような結果を見ると、暴力を含むゲームでも、演じる役を配慮すればOKなのではないかという気がしてきます。つまり、スーパーマンのような正義の味方であれば、戦うこともポジティブにつながり、善意ある行動が増えるのではないかと。しかし、そうではありません。この実験にはまだ続きがあります。

手紙の実験結果は、スーパーマン役とジョーカー役を比較すれば、スーパーマン役が大差をつけました。しかし、この結果を、ゲームを全くしなかった学生達と比較すると、スーパーマン役の学生以上に、ゲームをしなかった学生の方が、善意ある行動をとる傾向が強かったのです!比較対象がジョーカーだと、スーパーマンが光って見えますが、実際は、正義の味方だからといって善意ある行動を増やす効果はないのですね。

記事 『テレビの暴力シーンが子どもに与える影響』 でも触れましたが、私は、幼少時は、正義の味方であっても刺激になると考えています。ゲームについても同じ。だから、小さいうちは、しっかりと親が内容を吟味してあげたいもの。その際はゲーム特有のスリル感には欠けるかもしれませんが、「優しさ」「穏やかさ」「純粋さ」をポイントに選んであげることをおすすめします。
 

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