娘が小学4年生で簿記3級に合格した藤澤一馬さん。娘が幼い頃から「簿記は電卓を使うし、小学生でも挑戦できるのでは」とひそかに思っていたそう。ある日、娘が駄菓子屋のお菓子がなぜ安いのか疑問に思ったのを機に、「いまだ!」と簿記について教えました。
早期の資格取得は子どもの自己肯定感を高めるだけでなく、「ほかの誰でもない自分だからできること」を見つけることに役立つと考えています。なぜ、子どもに簿記の取得を促したのか。背景にある思いと、キャリア形成に向けた考えについて伺いました。

合格の達成感を、わが子にも感じてほしい
子どもが産まれる前から、「簿記なら身近な話題だし、計算に電卓を使う。小学生でもできるのでは」と見込んでいたという藤澤さん。
藤澤さん自身も、看護師として働く傍ら独学で簿記2級やFP、行政書士の資格を取得し、経営に必要な知識を身につけた経歴の持ち主です。合格率が10%未満だった行政書士に3年かけて合格した際は、「何事にも代えがたい自己肯定感や達成感を味わった」そう。「だからこそ資格取得を早めに促して、その気持ちを子どもたちにも感じてほしかった」と振り返ります。
そんな思いから、子どもたちの遊びにも、リアルなお店屋さんごっこを導入していました。値段のつけ方に着目するよう、仕入れた食べ物を3倍にして子どもに売りつけて、どんな気持ちになるか尋ねたり、どれくらいの値段なら買ってもらえそうか需要と供給が感じられるような声掛けをしてきました。
そんなとき、小学2年生の娘が駄菓子屋の商品がほかより安いことに関心を寄せました。「いまだ!」と思って、「簿記を取ったら、その理由が分かるかもよ」と伝えました。それから一緒に参考書を見て、簿記に挑戦することになったのです。
子どものチャレンジ精神を育てたい
藤澤さんが早期の資格取得を促した理由は、子どもにチャレンジする気持ちを育みたかったから。
資格取得は、ゴールが明確に設定されており、合格したら達成感や自己肯定感といった気持ちを味わうだけでなく、社会的な評価が付いてくることが身に沁みて分かります。さらに、合格に向けて勉強の仕方を工夫したり、机に向かう癖を身につけることは、いつか自分の身に降りかかる大きな壁を乗り越えるための力に直結します。
「世間では、資格よりも学校の勉強を優先すべしという声もあります。私も同じ考えで、優先すべきは学校の勉強。その延長や息抜きで資格取得を促しています。
資格は学校の教科と違ってすぐに社会で役立つ知識が多く、ニュースなどに目を向けるきっかけにもなります。資格を通して学んだ新しい知識が、学校の基礎的な学びの大切さに気が付くきっかけになることもあるでしょう。相乗効果が生まれることに期待しています」
資格合格の背景には、子どもの夢も
藤澤さんの娘が簿記を取得した背景には、「将来はギャルモデルになり、メディアに取り上げられる有名人になりたい」という夢があったことも理由の1つでした。
「子どもがギャルに憧れたことに驚きはありましたけど、一緒に調べるうちに自分の偏見にも気が付きました。ギャルにはギャルなりの信念がある。であれば、逆に『ギャルなのに、こんなことができる』というギャップが示せればいいんじゃないか。そうすれば、彼女の夢もかなうし、私の心も多少は穏やかになると思ったんです」
ギャルというだけで、メディアに取り上げられる時代は終わりました。今は、ダンスや歌がうまい子がたくさんいます。メディアに取り上げてもらうためには、何をすればいいのか。娘と相談して「『小学生×ギャル×簿記』はあまりいないんじゃない?」と提案したと言います。それが娘のモチベーションに直結しました。
「中学受験を考える家庭もあると思うんですけど、娘の夢にはあまりメリットはなさそうでした。それなら本人の思いをくみ取って、夢に近づける一歩を踏み出したいと思ったんです」
勉強のモチベーションが下がったときには一緒にオーディションについて調べて、「どうしたら審査員の目に留まるか」を考えたと言います。目立つためには「やっぱり簿記の取得が近道かも」と気づきを促し、初心を思い出させたとか。
簿記3級合格後は、節約する姿も見かけるように
勉強時間はノルマを設けず、楽しいと思える範囲で設定。やりたくない日は無理強いせず、初心に戻る時間を作ったといいます。
「分からない単語は、インターネットで検索しました。その時間は、ネットリテラシーについて考えるきっかけになりました。どんな単語で検索したらいいか考えたり、危ないサイトを教えたり。簿記に挑戦しなかったら、やらなかったでしょうね」
娘が簿記3級に合格してからは、率先してメディアに取り上げてもらえるよう呼び掛けました。娘の夢を夢物語で終わらせず、現実に落とし込めるよう寄り添ったのです。その結果、娘はいくつかのメディアで取り上げられて自信がつき、次の資格取得に向けて意欲的な姿勢を見せていると言います。
「前はお小遣いを全部使い切ってしまっていた娘が、友達と遊ぶときにはお菓子や水筒を持参して節約する日を決めたりして、やりくりするようになりました。自分のお金を何に使うか、よく考えるようになったみたいです。
最近は、家族で家計について話し合うときも同席させています。両親が貯蓄や生活費について話す際は、娘も意見することがありますよ」
資格取得は、「唯一」のキャリアを築くための一歩
「娘には、“唯一”のキャリアを築いてほしい」と藤澤さん。
「私が看護師として働いたときに、『看護師さん』と声をかけられることが多かったんです。でも、自分なりに挑戦するうちに、『藤澤さん』と呼ばれるようになりました。たったそれだけのことですけど、私だから任せてもらえたんだという喜びを感じました。
子どもたちにも、そういう“唯一”の人になってほしい。何より、それが、彼らの生きる励みにつながると思っています」
早期の資格取得は、その“唯一”を作る1つの手段。新しいことにチャレンジして、ほかとは違う「自分だからできること」に気付く1つのきっかけにしたいといいます。
「最近は生成AIが身近な存在になってきました。便利ですけど、答えをうのみにする人にはなってほしくありません。自分の頭で考えて、新しいことにチャレンジし、判断する力を養ってほしいです」
子どもの早期資格取得の背景には、子どものキャリア形成に通じる近道が隠されていました。
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藤澤一馬 プロフィール
訪問看護の所長。看護学校を卒業後、看護師として勤務する傍ら、患者からお金や手続きに対する相談を受けたことを機にFPの資格を取得。訪問看護の道に進むうちに、医療、お金、法律の三側面から、患者をサポートするために行政書士や簿記2級などを取得し、経営に必要な知識を身につけた。
この記事の執筆者:結井 ゆき江 プロフィール
フリーランスの編集者・ライター。中学受験雑誌の編集者として勤務した後に独立。小学校で発達障害グレーゾーンの児童をサポートした経験から、教育分野を中心にライターとして活動する。






