セクシュアルマイノリティ・同性愛/映画・ブックレビュー

映画『恋するリベラーチェ』上映中!(3ページ目)

11月1日、エミー賞受賞映画『恋するリベラーチェ』が封切られました。「あまりにもゲイ過ぎる」という理由で劇場用映画ではなくTV映画として制作されたそうですが、本当にゲイ的な、あまりにもゲイ的な作品になっています。その見どころを徹底解説!

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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稀代のスーパースターと純朴な青年との真実の愛

恋するリベラーチェ

映画では、見事にあのゴージャスさを再現

簡単にストーリーをお伝えすると、世紀の大スター・リベラーチェが、共通の友人を介して田舎出の純朴な青年・スコットと知り合い、恋に落ち、ラブラブで幸せいっぱいなおつきあいをスタートさせる、のですが、数年も経つと二人の関係もマンネリになっていき、ヘタにお金があるゆえに、また、外出もさせてもらえない鬱屈感ゆえに、スコットはクスリにハマっていき、リベラーチェの浮気症もあいまって、二人はケンカを繰り返すようになり……という感じです。(もういろんなサイトで紹介されている史実なので書いてしまうと、結局スコットは捨てられ、リベラーチェを訴えたりします。そして数年後、リベラーチェはエイズで亡くなるのです)

この映画の冒頭では、当時のゲイがどのように出会っていたのか? が描かれていて、面白かったです。ゲイバー(BGMはドナサマーの「i feel love」)でアイコンタクトして、それから自己紹介して、という、ネットとかスマホでお手軽に出会える時代のぼくらから見ると、何とも古風というか牧歌的なものでした。(リベラーチェは大スターなので違いますけどね)

恋するリベラーチェ

ウットリするほど、美しいです…

たぶん、望むものは何でも手に入る大富豪のリベラーチェなら、若くてかわいいイケメンをたくさんはべらしたり、恋人以外にも何人も愛人をつくったり、男の子と次々に関係を持ってボロ雑巾のように捨てたりとかもできたハズ。だけど、そうせずに、(何年か経つと飽きて次に行くという繰り返しではありましたが、つきあってる時は)きちんと紳士的に一人の彼氏とつきあい、ロマンチックなデートをして、彼氏にたくさんの贈り物をして、あまつさえ養子縁組さえ考えていた……男女のカップルと同じように(あるいは、スコットの場合、父と子のように)つきあっていたのです。

ドラァグクイーンとかもやってるゴトウは、どう考えてもリベラーチェ側なのですが(それだけに、リベラーチェの浮気には苦々しさを感じました)、ずっとスコットの目線で観ていました(自分だったらあんな「妖怪」とつきあえないや…とか)。スコットはたぶん他の男の子たちと違い、お金目当てというよりも、本気でリベラーチェという輝かしい才能を持った人間に魅了され、尊敬(崇拝というか)の念で彼とつきあいはじめたんだと思います(それ以前に、フケ専でもあったと思います)。本当に誠実に、心からリー(=リベラーチェの愛称)を愛したんだと思います。(そういえばハーヴェイ・ミルクの最愛の彼氏もスコットでしたね。すごい偶然)

恋するリベラーチェ

純朴な青年・スコットは、リベラーチェの世界に魅了され、やがて尊敬が愛に変わっていくのです…

リーもまた、そんな彼を特別に愛していました。だからこそ、死期を悟った時に、リーはああいうふうに言ったのです(何と言ったのかは、ぜひ映画で観てください)。あれは嘘のない、真実の言葉でした。たくさんの出会いと別れを繰り返しがちなゲイにとって、ああいうふうに言われることは最上級の喜びだったんじゃないかと、ゴトウはそう思います。(正直、ちょっと泣けました)

マット・デイモンはインタビューで「スコットの愛は本物だった。ただ、そう単純なものではなかったと思う。彼は里親に育てられ、本当の家族を求めていた。それを与えてくれたのがリーだった。彼らは心の底から愛し合っていたと思う」と語っています。本当にそうだと思います。

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