セクシュアルマイノリティ・同性愛/映画・ブックレビュー

映画『恋するリベラーチェ』上映中!(4ページ目)

11月1日、エミー賞受賞映画『恋するリベラーチェ』が封切られました。「あまりにもゲイ過ぎる」という理由で劇場用映画ではなくTV映画として制作されたそうですが、本当にゲイ的な、あまりにもゲイ的な作品になっています。その見どころを徹底解説!

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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もしゲイが生きやすい時代だったら…

恋するリベラーチェ

 

リベラーチェは死ぬまでゲイであること(そしてエイズを発症したこと)をひた隠しにしようとしました。それは、1910年代生まれの人間にとっては当然の感覚だろうと思います。50年代、商業的な成功を収めていた絶頂期、リベラーチェは大衆紙に「ゲイじゃないの?」と書かれ、恐怖を味わいます(まだ同性愛が違法で、ゲイバーにいただけで逮捕されるような暗黒時代でした。ゲイだということになれば、キャリアの終焉を意味します)。後に裁判で名誉毀損を勝ち取ったこともあり、彼は後に引けない(決してゲイだと認められない)状況にハマりこんでいったのではないかと思います。

マット・デイモンは「聞いた話によると、スコットとの関係が明るみに出たその夜、リベラーチェはステージ裏で怯えきっていたそうだ。彼はやじやブーイングを受けるんではないかと恐れていた。ファンは自分を許してくれず出ていけと言うに違いないと思っていたんだ。そして彼がステージに上がると観客は拍手喝采で迎えてくれた。その時彼は初めて『大丈夫なんだ、受け入れてもらえるんだ』と気づいたんだと思う。彼のように怯えて暮らすのがどんなにつらいことか、僕には想像もつかないよ」と語っています。

もしリベラーチェがあと30年遅く生まれていて、もっとゲイがオープンに生きられる時代に活躍していたら、エルトン・ジョンのような存在になっていたかもしれません。スコットも堂々と外でデートしたり(アカデミー賞の会場にもパートナーとして同伴できたかも)、ヤク中になったりもせず、結婚して、生涯のパートナーになっていたかもしれません。そして、リベラーチェもエイズで亡くなることはなかったかもしれません。 

少なくとも、スコットが彼と結婚できていたら、たとえ捨てられたとしても、妻として多額の慰謝料をもらうことができたはずです(相手が大富豪であればなおさらです)。実際はたったの7万5千ドルだったそうですが……。(映画でも、そのあたりの不条理さが描かれています)

しかし、こうした歴史上の「if」は、えてして無粋なものです。あの時代、あのような特別な状況だったからこそ、あのようなたぐいまれな、ドラマチックな(そして、一部グロテスクな)ロマンスがありえたのです。(だからこそ、こうして映画にもなっているわけです)

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