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「行事育」注目したい五つの力(2ページ目)

親子の根っこをはぐくむ 和文化研究家・三浦康子の「行事育」メソッド。「行事育」には、素晴らしい効用がたくさんあります。これをわかりやすく整理し、【根っこになる】【絆になる】【心豊かになる】【賢くなる】【元気になる】という五つの力にまとめました。

三浦 康子

執筆者:三浦 康子

暮らしの歳時記ガイド

 

「行事育」五つの力:絆になる

「思い出ボタン」が押されるたびに、親子の絆・家族の絆が強くなります

「思い出ボタン」が押されるたびに、親子の絆・家族の絆が強くなります

絆は心の結びつき。単に絆といっても、その強さはまちまちです。絆という字は馬などを木につなぎとめる綱に由来し「木綱」と書いていたそうですから、絆の強さは結び方で変わっていくといえるでしょう。

もともと、行事には絆を結んだり強めたりする働きがあります。たとえば、お正月に親戚が集まると「家」が結束し、地元の祭りに加わると地域のつながりや郷土愛が強くなりますね。ですから、行事には家族や親戚のように縦のつながりで楽しむもの(=縦の絆になる)と、友達や地域のように横のつながりで楽しむもの(=横の絆になる)が定期的にあり、生きる基盤をととのえる作用があります。

とりわけ「行事育」は親子の絆を強くします。「行事育」の特徴は毎年めぐってくることですが、これが大変効くからです。子育て中は同じことを繰り返しながら絆を強めていくことができます。成長すると一緒に過ごすことは少なくなり、やがて独立していきますが、行事文化は毎年続きます。

すると、幾つになってもお正月がくれば実家のお雑煮を思い出し、端午の節句が近づけば幼い頃の記憶が蘇る……私はこれを「思い出ボタン」と呼んでいますが、「行事育」の良いところは、毎年その時期がくるたびに何かしら行事にふれる機会があり、記憶を呼び覚ます「思い出ボタン」が押されて、行事にまつわる思い出が蘇るところです。時が経つにつれ細かいことは忘れてしまうものなので、こうして思い出した内容が上書き保存され、人生を物語る要素となっていくでしょう。さらに、大人になればなるほど親の気持ちや行事の意味がわかるので、そのありがたみが増していき、その思いが次の世代にも受け継がれていきます。

こうして強い絆で結ばれていると、何かあったときに家族を悲しませるようなことはできないぞ、と踏ん張れる人に育ち、愛されて育った人は、家族やまわりの人を愛することができるので、幸せの連鎖が続いていくでしょう。

我が子の「思い出ボタン」が押されたときに、素敵な思い出がたくさんあると良いですね。親というのは子より先にこの世を去っていくものですが、思い出の中で生き続けると思ったら、やり甲斐も違ってくるのではないでしょうか。
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