パワハラを起こさない労務管理の勘所とは!
パワハラは、職場の人間関係の在り方を今一度考えていくべき深いテーマ
では、「パワハラ」を取り締まる法令は?というと、実は取り締まる直接の法令がないのをご存じでしょうか。実際に問題が起きた際には、民法の解釈により、民事上の問題として企業が損害賠償責任、債務不履行責任を問われることになります。また精神障害によって労災認定の対象となる場合もありえます。
今回の記事では、どういうケースが「パワハラ」なのか、企業の責任、とるべき措置、予防法、解決法などの解説をいたします。マニュアルはあってないような世界です。職場の人間関係のあり方を今一度考えていくべき深いテーマと言えるのでしょう。人間関係=「信頼関係」がキーワードです。快適な職場環境を構築し実践していくことこそ、労務管理の極みなのですね。
どういう行為が「パワハラ」になるの?
最近本当に耳にすることが多い「パワハラ」。それってパワハラ?というケースもありますよね。■職場のパワハラとは?
厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」ワーキンググループ報告書(平成24年1月)」により、次のような概念とされています。
「同じ職場で働く人に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」
職場ですから、指揮命令系統などの優位性は当然ありますね。上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには人間関係や専門知識などによる部下から上司などの様々な優位性を背景に行われるものも含まれると解釈されています。
具体的にはこんな行為!
いずれも職場環境は一気に悪化してしまいます
- 暴行・傷害(身体的な攻撃)
- 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
- 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
- 業務上明らかに不要なことや遂行不能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
- 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
- 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
1.はたとえ業務の遂行に関係するものでも前記の「業務の適正な範囲」には当たりません。身体的なダメージを与えて叱咤激励するスパルタ指導は適正とは言えませんね。2.と3.は、原則として「業務の適正な範囲」を超えると考えられます。4.~6.は、何が「業務の適正な範囲」を超えるかは業種や企業文化の影響を受け、具体的な判断も行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによって左右される部分があります。各企業・職場で認識をそろえ、その範囲を明確にしておくことがポイントです。
次のページでは、パワハラによる企業と従業員のダメージを解説しています。