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祝・三陽山長二子玉川店リニューアル 後編

前編に引き続き、二子玉川店のリニューアルが叶った三陽山長の話題作をご紹介致します。伝統を感じさせるデザインの靴だけでなくカジュアルを意識した靴も得意なのが、このブランドがこのブランドたるところ。今回はその双方をご堪能いただきたく!

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

「らしさ」をひたすらに追求!

鷲六郎

このブランドらしい質実剛健な顔立ちの「鷲六郎」です。靴紐を平紐にしたのが、何気なくも非常に有効に作用しています。底付け:グッドイヤー・ウェルテッド。アッパー:黒カーフ・焦げ茶スエード。底:黒=レザーソール・焦げ茶スエード=ビブラムイートンソール。サイズ:61/2~9。税込み価格:7万350円(三陽山長 二子玉川店 TEL:03-5491-2347)

土休日でなくても家族連れが意外と多く見られる東京の勝ち組エリア・二子玉川に店舗を構えて丸10年が経ち、この度店舗をリニューアルした三陽山長。前回採り上げたノーズのやや長いスクエアトウ「R309」木型の2作は、どちらかと言えば現代性を意識したものであるのに対し、今回最初にご紹介するラウンドトウの新定番「R2010」木型を用いた2足は、このブランドの創設当初からの質実剛健なDNAをより直截的に引き継いだ存在と言えます。

「R2010」は一見平凡なラウンドトウに見えるものの、一度履いたら瞬時に理解できるのは、甲・土踏まずそしてかかとを軸に点ではなく面でフィットさせる完成度の極めて極めて高い木型であること。幅広い年齢層から支持を得ているのも当然のそれと、バリバリに相性抜群なデザインパターンを有する内羽根式フルブローグが、上の写真の「鷲六郎」です。つま先にあるウィング型のブローギングの曲線具合や、鳩目の横間隔が甲からつま先に向けて絶妙な末広がり形状になっている点などに、普遍的なデザインだからこそ表現可能な、地に足の付いた真の個性を感じずにはいられません。

アッパーが黒カーフのものはアウトソールにレザーを採用した一方、休日使いがメインとなるこげ茶スエードものにはイタリア・ビブラム社のイートンソールとするなど、使う場面を想定し尽くした仕様を選択している点にも好感が持てます。後者はイギリスの著名なラバーソールとデザインこそ類似していますが、それより耐摩耗性が遥かに高いのは知る人ぞ知るところ。デザインは明らかにイギリスの靴を意識しつつソールは敢えてビブラム社のものを採用する辺りは、実用に即したより効果の高いスペックで商品作りを行おうとする、このブランドの誠実な姿勢の象徴と言えるのではないでしょうか。
長一郎

正に「ドレスブーツ」と呼ぶに相応しい「長一郎」です。アッパーのカーフとスエードとを分ける線が、とにかく美しい! トウキャップの位置も前過ぎず後ろ過ぎず、バランス良く納まっています。底付け:グッドイヤー・ウェルテッド。アッパー:黒・焦げ茶(いずれもカーフとスエードの同色異素材コンビ)。底:レザーソール。サイズ:61/2~9。税込み価格:8万4000円(三陽山長 二子玉川店 TEL:03-5491-2347)

一方「長一郎」は、今季密かなブームになりそうなドレスブーツ形式の外羽根式キャップトウで、こちらも「R2010」木型の造形美が引き立つモデルです。ブーツだとどうしても生じがちな粗野な印象を全く感じさせず、かと言ってか弱さ・貧弱さは微塵も見られないこのブランドらしい引き締まった仕上がり。カーフのスムースレザーとスエードとのアッパーのコントラストが、同じ色を用いているからこそ落ち着きを有しながらも明確に伝わって来ます。上部の鳩目はいわゆる「スピードフック」仕様なので、靴紐を通すのが思いの外面倒ではないのも大きな魅力です。

ドレスシューズだけでなく三陽山長はカジュアルな要素を持つ靴も得意! 次のページではその中から2足!
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