「空いろ」
2年前に「空也」の別業態として「空いろ」がオープンしたのは、多くの人が行き交うJRの駅の構内でした(現在の店舗については記事の最後に記載)。お洒落な店舗にパッケージ、モダンな味わい。私自身、頑ななまでのスタイルも含め、長年「空也」のファンだったので、「空いろ」と「空也」のあまりの違いに戸惑いを覚えたものです。実際に訪ねてみると、「空いろ」を開いたのはご子息で「空也」の店主は渋いお顔。「空也」の方針ではなかったのかと納得すると同時に老舗和菓子店が別業態で新たなスタイルの和のお菓子を提案することが珍しくはない時代、「空いろ」らしさをどう出していくのだろうと感じた2年前。そして再び訪ねた今回。
その間、「空いろ」はホームページを立ち上げたり、第一ホテル東京にてコラボレーションメニューを提供するなど、「空いろ」の認知度を高めるべく積極的に登場の場を増やしている様子がうかがえました。
さらに「空いろ」のお菓子には少しずつ改良が重ねられていて、当初米粉100%にこだわったため固くなりがちだった、どら焼き「たいよう」の皮は、冷めても柔らかさを保つようにと小麦粉をブレンド。
現在の主力、餡をサンドしたクッキー「つき」には、プレーンのほか、抹茶味のクッキーが加わり、季節の餡も登場。アーモンド粉を加えた生地はホロホロとして、しっかり煉られた餡は水分が飛び、もっちりとした独特の食感です。慣れ親しんだ和菓子の餡というより、「豆のジャム」と呼ぶ方がしっくりくる、どこか異国風の味わいです。
当初、特殊な機械で豆の皮まで微細に砕き、ペースト状に煉り上げたオリジナルの「○(まる)あん」を挟んでいたところを潰し餡に代え、さらに主張の強い大納言小豆を省いたためでしょうか、バランスがより良くなって、一体感が増したようです。
今回改めて「空いろ」の店主、彦之さんにお話を伺いましたが、「空いろ」を立ちあげた背景には消費者の和菓子離れへの危機感があったそう。国内外の幅広い層に和菓子、特に餡の魅力を伝えたいと思う一方で、「空也」の今のスタイルは変えたくないという強い気持ちがあり、別業態の「空いろ」の立ち上げを決めたとのことでした。
その横で「『空いろ』はまだまだ。そのことで『空也』に迷惑をかけないように」と厳しく話す4代目もひと肌脱いで、「空いろ」のお菓子も共に提供させてもらえるならばとJALのファーストクラスの機内食へ「空也もなか」を提供したり、「空也」のお菓子のしおりに「空いろ」の紹介文を載せるなど、協力体制を敷いています。
2年経ち、「空いろ」のお菓子とお店のスタイルは、ご家族と新旧のお客様に導かれるように方向が定まりつつあるようです。伝統を背負い、それを守りながら新しいものを生み出す難しさを思いながら、店を後にしました。
<店舗情報>
■空也
所在地:東京都中央区銀座6-7-19
東京メトロ銀座線ほか銀座駅より徒歩3分ほど(銀座6丁目並木通り)
電話:03-3571-3304
営業時間:10:00~17:00(土曜日~16:00)
定休日:日曜日・祝祭日
地図:Yahoo!地図情報
■「空いろ」
エキュート品川店
所在地:JR品川駅構内
電話:03-3443-7440
営業時間:8:00~22:00(日・祝日~20:30)
TOKYO Me+(トウキョウミタス)店
所在地:東京駅一番街1F TOKYO Me+内
電話:03-6256-0582
営業時間:9:00~20:30(土・日・祝日~20:00)
西武池袋店
所在地:西武池袋本店 本館地下1F 中央A5
電話:03-5949-5081
営業時間:10:00~21:00(日・祝日~20:00)
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