ではなく、「つくろう」と思いたち、大工さんに造ってもらうことにした。
机の天板は、タモの無垢の一枚板を、材木屋さんから取り寄せた。
既製品ではなかなか見ない、幅2.1メートルの大きな天板。
置こうと思っていたスペースにぴったりのサイズだ。
無垢の木だから、どっしりと重い。
木目もキレイ。手触りも、とってもいい。
好きな素材、好きなデザイン
この天板が引き立つようなデザインの机にしようと思い、足元には収納力のたくさんある引き出しや棚をつけて、その上に置く天板は、ちょっと浮いた感じに見えたらいいな、などと、あれこれ考えた。机の目の前には壁がある。この壁には、本棚をつけてもらうことにする。壁付けの、宙に浮いたような本棚だ。真四角の本棚では面白くないから、片側を段々にしよう。こうしてオリジナルデザインの机と本棚の形が決まった。
造り付け家具・オーダーメイド家具のいい点
オーダーして作ってもらった机と本棚。この後柿渋を塗って出来上がり。
造り付け家具は、基本的に動かせない。私が作ってもらった壁付きの本棚は、壁にしっかりとビス止めされている。
動かせないということは、地震の時でも倒れてこないということになる。地震対策で、部屋の置き家具を減らしなるべく造り付け家具にしましょうと言われるくらいなので、造り付け家具は今のご時世にも合っていると思う。
机の方は、止めようがないのでこちらは床に置いてある。背が低いから地震時に転倒はしないし、これなら万が一引っ越ししても、持っていけると思っていた。好きなものに囲まれた暮らしが始まったと思ったら
でも、人生には予期せぬことが起こるものだ。わが夫に転勤命令が出た。ずっと住むつもりで家具をつくり、好きなカーテンを選んで設置したのに、そのわが家としばらく離れなければならなくなった。これらの家具たちをどうするか、考えた。壁についた本棚はビスを外せば持っていけるかもしれないけれど、次に入る賃貸住宅にはビスを打てない。だから、このまま置いていくしかない。
動かせてもサイズと重さがネックに
次に天板の幅が2.1メートルある机はどうするか。平面プランを見る限り、次の住居に入りそうではあったけれど、ここで運送屋さんからストップが入る。大きすぎて、運べない。運送中に破損する恐れがある、うんぬん。というのは、オーダーメイドで造りがやや凝った机なので、組み立て式の机のように、バラせない。天板は、無垢の一枚板なので重くて大きい。そしてその下の、引き出しなども天板と一体化していて、運ぶとしたらこのままの形で運ぶしかない。運送屋さんとしては、こんな大きなものを運ぶのに保証はできません、ということだ。そこで、非常に残念だったけれど、結局これも置いていくことにした。
造り付け家具・オーダーメイド家具の注意点
造り付け家具・オーダーメイド家具をこれから発注するときに気をつけたい点をまとめてみた。・(可能なら)壁や天井から外せるようにしておくこと
・なるべくバラせる構造にすること
・組み立てと分解がしやすいこと
・一つ一つのパーツが持ち運びやすいサイズ、重さにしておくこと
こうしておくと、もしかしたら、引っ越し先でも使えるかもしれない。家具を造ってくれる大工さん、家具職人さんと念入りな打合せをしよう。
住まいも家具もフレキシブルに
愛すべき手作りの家具たちは、今は空き家になった留守宅にある。転勤が終わって戻ってきたらまた使う予定。でも、これから先また引っ越しがあるかもしれず、その時々で頭を悩ます存在になるだろう。住まいも家具も、造ったら終わりではなく、そこで生活を始めてから長いお付き合いが始まる。月日の流れとともに、家族構成もライフスタイルも変化し、予期せぬことも起こるものだ。住まいも家具も、その変化に柔軟に対応できるように造っておくことが大切、ということを身をもって学んだ。
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