開放感とプライバシーの均衡
基本性能の高さに関連することで、もう1点だけ触れておこう。バルコニーの手すりについてである。昨今、マンションのバルコニーはガラス手すりが主流だ。マンションならではの眺望が楽しめ、採光上も有利。しかし、見えることは見られることでもある。「桜上水ガーデンズ」のように、南向き比率が高く、ハイサッシュ(2.2m)を採用しているなら、コンクリート壁を立ち上げたほうがプライバシー面とのバランスも図れるという判断も間違ってはいないだろう。洗濯物を干しても美観を損ねないといった利点もある。スタイリッシュなイメージを大事にするか、気軽に暮らしやすい空間を優先するか。同物件では、実(じつ)を取る一貫した姿勢を感じるのだが、読者の皆さんはいかがだろうか。
これは建て替え事業であることが少なからず影響しているのではないかと推察する。建て替えマンションに共通して言えるのは、過ぎた設備仕様をことごとく避ける傾向があること。ときにクオリティ(設備仕様など)がアンバランスでは?と感じることもあるが、「桜上水ガーデンズ」に関しては立地に恵まれていることもあり、非常にわかりやすい住み手の価値観を重視した仕上がりだ。
一団地の建て替えは要件が厳しい!?
野村不動産は「プラウド新宿御苑エンパイア」、「三田レジデンス」、「トミヒサクロス」など都心部における建て替えがらみの案件が増えてきた印象。これ以外にも現時点で計10か所ほどのプロジェクトが進行中だという。「桜上水ガーデンズ」では、通常の建て替え要件である「議決権の5分の4以上の合意」を得ることができたにもかかわらず、団地の場合に適用される「各棟の議決権の3分の2以上の合意」形成が図れず、そのために2年の歳月を要したという。これにはさすがに「業界団体を通して規制緩和を求めた」(野村不動産 執行役員住宅事業本部プロジェクト開発部・マンション建替推進部・プロジェクト事業推進部担当松崎雅嗣氏)とのこと。
昭和の高度経済成長期に建設された集合住宅は、利便性の高い好立地であることが多い。耐震性を高め、居住性をより向上させることで住まいとしての、あるいは資産としての価値が一層高まるのであれば、建て替えは検討に値する手法のひとつである。「桜上水ガーデンズ」のような高質な設計を実現した例は、今後のケーススタディとして大いに役立つと思える。
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