地球とは思えぬ脅威の景観、死の砂漠デスフレイ

デスフレイの信じがたい景観

デスフレイの信じがたい景観。死の砂漠ではあるが、地下にはまだ水分が残存しているため、動物や昆虫はこの地によく集まってくるらしい ©牧哲雄

立ち枯れた木々がなんとも神秘的

立ち枯れた木々がなんとも神秘的 ©牧哲雄

ナミブ砂海の見所はデューンだけではない。特に凄まじい景観を見せるのがデスフレイだ。

もともとここは砂漠の中に誕生したオアシスで、周囲には林や草原などの緑が広がっていた。やがてオアシスが干上がると、泥は太陽の熱射を浴びてめくれあがり、ガラスのように砕けて散乱した。

木々はカラカラに乾燥し、燃えたあとのススのように黒ずんでいる。その姿は幹や枝というより根のようで、大地に頭を突っ込んで根を空へ伸ばしているようにさえ見える。

デスフレイとは「死の沼沢」という意味を持つ。文字通り、土地が死にゆく姿なのだ。

 

生命の楽園、ナミブ砂海

ウェルウィッチア

ほとんど葉と花しかないウェルウィッチア。葉はたくさんあるように見えるが先端が枯れているだけで、2枚しかない ©牧哲雄

ウェルウィッチア

ウェルウィッチア ©牧哲雄

見渡す限り砂と岩石しか存在しないナミブ砂海は「死」や「地獄」を思わせるが、実は驚くほど多彩な生命を育んでおり、そこで暮らすものにとっては楽園であったりもする。

たとえばウェルウィッチア(サバクオモト。奇想天外)。およそ1億年前に登場したというこの奇妙な植物には葉が2枚しかない。しかしこの葉が優秀で、いくらでも成長を続け、空気中に漂う霧から水分を吸収することもできる。

根も頑丈で、数m~10mの地下から地下水を吸い上げている。こうした工夫によって砂漠を生き抜き、1000~2000年に達するという長寿を獲得した。

 
木陰にたたずむオリックス

木陰にたたずむオリックス

昆虫ではサカダチゴミムシダマシがおもしろい。ナミブ砂海では雨が降らない代わりに時折濃霧が発生する。この虫は濃霧が出ると逆立ちをして、溝の付いたお椀状の身体を風に当てる。身体に触れた霧は揮発性の羽に当たって小さな水滴となり、水滴は弾かれて溝に集まり、溝から頭を伝ってすべての水滴が口に集中する。この滴を吸って水を確保しているのだ。

同様に、目や巣で霧を集めるトカゲやクモ、水分を保有するウェルウィッチアに寄生するカメムシ、砂にダイビングする昆虫など、超乾燥地帯を生き抜くために独自の進化を遂げた数多くの生物が暮らしている。おかげで植物の53%、昆虫の52%、爬虫類の44%、哺乳類の17%、鳥類の11%が固有種なのだという。