そそり立つ要塞群の石壁に沿って歴史さんぽ
あちこちに張り巡らせてある要塞の石壁。現在は、内部室をレストランや劇場などとして利用している場所もある
歩いているときの目線ではその全容がわかりにくいですが、今日のスオメンリンナの要塞を上から俯瞰すると、見事な星形を描く城壁が延々連なっています。つまり要塞の跡は今もほとんど現存しており、複雑に入り組んだ石壁づたいに、そのリアルなようすを訪ねてまわることが可能なのです。
足元に気をつけながら、雰囲気満点の内部探検を楽しもう!
要塞内部の暗がりのトンネルを探検できる場所もあれば、雰囲気のある穴蔵のスペースを利用したレストランやカフェも。さらには、かつて日本とフィンランドの友好を深める意で石壁の奥にひっそりと造られた、裏千家流のお茶室「
特有庵」まで。
こうした要塞群は、島全体がそこまで広くないことからも(船着場から南端の岸辺までまっすぐ歩いて30分ほど)、まるでロール・プレイング・ゲームを楽しむ感覚でランダムに訪ね歩くのも楽しいかもしれません。けれど効率よく位置関係や見どころを押さえたいのであれば、出航前に
ヘルシンキ市観光案内所に立ち寄るか、島への上陸後にまず島の中心部にあるビジターセンター(
Suomenlinna Museumに併設)を訪れ、地図を手に入れると良いでしょう(日本語版あり)。
大砲に潜水艦、攻防の歴史を物語るアイテムもお見逃しなく!
臨海に突如立ちはだかる潜水艦は、内部が博物館として公開されている
要塞の石壁以外にも、島のあちこちには往時の戦いの歴史を物語るアイテムが現存しています。例えばビジターセンターの前の橋を渡り、海岸づたいにしばらく歩いて行くと、突如厳つい潜水艦「ヴェシッコ号(Vesikko)」が現れます。これは第二次世界大戦中に、旧ソ連の戦艦を迎撃したフィンランド海軍潜水艦。戦後に廃船にされたヴェシッコ号は、今日ではその内部のようすがミニ博物館として公開されています。
平和な景色のなかに佇む錆びついた小型砲台の姿
また島の南端の岸辺では、錆びついた小さな砲台がいくつも海の方を向いている景色に出会えます。「兵どもが夢の跡」……かの名言がふっと頭に思い浮かぶ、平和な美しい野に佇む砲台の姿を見て、歴史ロマンに感じ入る人は少なくありません。
この他にも南端部では、かつてスウェーデン王が上陸の際に利用し儀式にも使われていたという「王の門」や、屋根に草木を生やして目立たなくしたシェルター状の建物群など、要塞時代の情景を想像させるさまざまな光景を目の当たりにします。
歴史ある教会は、フィンランド一人気のある結婚式場!
今でこそシンプルなシルエットのルーテル教会だが、完成当時は玉ねぎ型の屋根を乗せたロシア正教会の教会だった
市営フェリーの発着場から島の中心部に向かって歩いて行く途中、清楚なつくりの教会が現れます。1800年代なかばに築かれたこの教会は、もともと豪壮な玉ねぎ型の屋根を持った典型的なロシア正教会でした。けれどフィンランドの独立後、その歓びを体現するかのように、すぐさま現在のシンプルなルーテル教会に作り変えられたのでした。
馬車に乗って要塞の狭間の石畳を闊歩するウエディングカップルはスオメンリンナ名物!?
実はこの教会、フィンランドで最も人気のあるウェディング会場としても知られているのです。ヘルシンキなので出席者も集まりやすく、式のあとに雰囲気満点の要塞のまわりを馬車で闊歩できるのが人気の秘密。もし島内で馬車に乗ったウェディングカップルを見かけたら、「Onnea!(オンネア=おめでとう)」と祝福の声をかけてあげましょう。
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最終ページでは、地元っ子流スオメンリンナの楽しみ方とグルメ情報をご紹介!