Q:合宿がきっかけでカンパニーに入ったメンバーはいますか?
麿>かなり多いですよ。身体を人前に晒して発散すると、味を占めるものがあるんでしょうね。でも、そこは危ないところでもあって……。いつもいつもあの熱気の中で生きてる訳じゃない。ハレとケがあって、合宿の時期というのは彼らにとってハレだから。特に夏だし、裸になって踊って、童心に返ってる。ひと夏の恋じゃないけど、病が深くなりすぎて、いつまでも冷めない人も中にはいますよね(笑)。Q:始めた当初と現在で合宿生に違いはありますか?
麿>そう大きくは変わってないんじゃないかな。どの時代にもやっぱりあぶれ者というか、どこにも要を足さないと自分で思ってる人がいる。ただ昔の方が、要も足さないという意識をポジティブに捉えていたよね。“オレはこういう社会はイヤだ”とか、“そんなトコには入ってやらないぞ”とか……。今の人の場合は、“なりたいけどなれない”っていうネガティブな面があるのを感じます。学歴が高いのに就職できなかったから仕方なく、とかね。“何かをやりたい”っていうより、むしろ“何かを教わりたい”という意識が強い。教わって、何かを与えられたいという感じ。与えられたいといっても、“子供じゃないんだから、掴み取らなきゃいけないぞ”と思うんだけど。そういう意味では、大分違ってくるのかな。受け身的な側面は、今の子たちの方が強いのかもしれないですね。
Q:合宿生の中には、自分を変えたくて来る人もいるのでは?
公演に向けてリハーサル
身体的に言うと、ちょっと女性の方が強いかな。女性はドーンとしてるけど、男の方がか細くてフワフワしてる。でも坊主にすると、急に男が出てきたり(笑)。踊りで女性を持ち上げたりしている内に、なんだか自信がついてくる。それがいいかどうかはわからないですよ。そんなことで自信を持ってどうするって思うし、“男だ!”って意識したからどうなのっていう感じもするけど(笑)。
女性の方がたくましく見える部分は確かにあるし、基本的にそういうものですよね。僕らが小学生の頃なんて、女性の方が10歳くらい上に見えたものだし。ただ年取ってまでそうだとなると、ピーターパン症候群じゃないけど、モラトリアム的な面があるのかもしれない。でも合宿に来るということで、一歩踏み出そうとする力はある。ひと夏一緒に過ごすというのは、彼らにとってある種イニシエーション的な意味があるのかもしれない。
ウチは更正施設じゃないんだけど、そういう側面も少なからず出てきますよね。合宿を経て、障害を持つ人や引きこもりの人たちに教えてる人もいるし。自己表現ができない人、コミュニケーションの上手くできない人たちが来ることもある。いろんな人がいるから、こっちも勉強しないといけないよね。
Q:男性には断髪式がありますね。それを乗り越えると、また吹っ切れる部分があるのでは?
麿>断髪式はひとつの儀式ですよね。もちろん強制ではなくて、断髪する・しないはその人の自由。でも一応“男は頭を剃る”っていうのは慣習化してます。イヤだイヤだと言ってるうちに、半ば強制的に剃られてしまうという(笑)。そこで何か変わる人もいるだろうし、こんなの軽いって思う人もいるだろうし……。断髪式をするのは公演の前々夜。男性が坊主にすると、急に大きく見えちゃったりするから不思議だよね。それまで小さく収まってたのが、うわっと大きくなったりする。見てくれが変わるだけで、何か吹っ切れるものは心理的にあるようですね。髪の毛を長く伸ばしていた憂いある青年が、バーッと一気に頭を剃っちゃうと、すっかり悩みがなくなっちゃうような(笑)。そういう感じはあるかもしれませんね。
公演前々夜の断髪式。麿さんやメンバーの手により丸刈りにされる