労務管理/労務管理に関する法律

従業員の雇用形態として「限定正社員」制度を考える!(2ページ目)

企業の雇用形態は、おおよそ正社員と非正社員の2区分ですが、その中間に当たる働き方がクローズアップされています。「限定正社員」(従来型の正社員ではなく「労働条件が限定」された「正社員」)制度のことです。限定正社員制度がどのようにルール化されようとしているのか、企業のメリット・デメリット、実務上の留意点などを解説していきます。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド


企業経営にとっての効果・問題点は?

「限定正社員」制度導入に当たっては自社の雇用ルールの明確化が第一

「限定正社員」制度導入にあたっては自社の雇用ルールの明確化が第一

■メリット(効果)
1.「非正社員」の雇用が安定する!
従業員の中には雇用の安定(無期雇用)を希望してはいるものの、逆に転勤や職種変更は望まない者もいるので、限定正社員制度では「雇用の安定」を図ることが可能になります。もちろん、さらに進んで「限定正社員」から「正社員」への中継ぎ的登用制度も当然考えられます。

2.ワークライフバランス&転職市場の形成が進む!
労働条件が「限定」されることで、従業員ごとのライフサイクルに応じることができ、今後さらに進むであろう子育て・介護との両立がしやすい環境が整備されます。また特に女性従業員の労働参加の促進、さらなる活躍の場の増加も期待できます。さらに「限定型」雇用なので「人が動く(転職)」市場が形成されやすくなり、自身のキャリア形成をより意識するようになることでしょう。

■問題点として考えられること
今回の「限定正社員」制度は、前述のとおり議論中で法整備がまだなされていません。そうした状況下、企業現場をみてみると、就業規則や労働契約で「限定」が明確化されていないことが多くあいまいな運用が多いようです。

また「限定」であるが故に、職務がなくなった場合や勤務事業所が閉鎖された場合は解雇が容易になされてしまうのではないか、正社員から限定正社員への格下げ誘導などがなされるのではないかという懸念があります。逆に正社員は今以上の転勤や長時間労働の懸念などが生じます。

自社の雇用ルールを明確化しておこう!

このように、メリットだけでなくデメリットも考えられますので、企業実務では次のように自社の雇用ルールを明確化しておくことが大切です。法整備がなされるのを待つのではなく先んじて対策を打っておくのです。労務管理の勘所はここにあります。

1.就業規則や労働契約でルールを明確化する
就業規則などにおいて明確に規定することと、特に労働条件通知書(労働契約書)に職務内容・勤務場所など条件をより明確にしておくことは必須となるでしょう。たとえば勤務地限定なのに、転勤させている場合などはよくありがちですね。あいまいなまま運用されているとトラブルになりかねません。

2.「限定(勤務地、職務限定)」条件が消失した際の解雇ルールを明確化する
解雇は労働契約法によって厳格なルール(解雇権濫用の法理)があります。解雇をするためには客観的な合理性や社会的相当性が求められることを心しておかなければなりません。従業員との合意形成は必須です。なおたとえ合意がとれたとしてもその後、紛争になった場合、解雇が有効か無効かの判断は最終的には司法判断によります。

この解雇ルールの法整備がどうなるのかは、特に注視すべき点といえるでしょう。

<参考記事>
パート・バイトなど有期労働契約の新ルールの留意点
<参考資料>
労働契約法の改正について~有期労働契約の新しいルールができました~
(厚生労働省)


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