スープが冷めない距離に住む「近居」はどうだろう。
ところで住まいを考えるタイミングが「結婚」だったら、どうだろう。親との同居ってメリットがあるのだろうか。
同居の最大メリットは住宅費
東京などの大都市圏では核家族が多くなり、二世帯同居のほうが珍しい。ずっと東京に住んでいたけれど、結婚してすぐ同居を始めた人をほとんど知らない。でもいったん地方に出ると、まだまだ二世帯同居は多く、おばあちゃんが家事や子育てをし、お嫁さんは働きに出るという家庭も多い。現在住んでいる山形では、私の周辺では二世帯同居の方が多いくらいだ。
何しろ、大都市圏と地方では住宅の面積が違う。都道府県別1戸当たりの延べ面積ランキングを見ると、山形県は4位で138.06m2(41.76坪)、東京は47位(最下位)で63.94m2(19.34坪)、その差2倍以上である。
もし家の広さが十分あり、親も同居を望むのであれば、子世帯夫婦にとっても費用面でもメリットがある。でもホントに同居っていいのだろうか。費用面をいったん棚に上げて考えてみたい。
思い描いた通りにならない同居生活
私の結婚生活は、(自分の)親との同居の形でスタートした。当時は遠距離通勤の夫婦共働きで、子どももすぐに生まれ、とても助かった……と、言いたいところだけれど、実は考えていたような生活とは、かなり違っていた。「同じ家にしゃもじを握る女が二人いるとうまくいかない」というが、お姑さんとお嫁さんの話だけではなく、実の母娘でもそうだった。いや、実の母娘のほうが遠慮がない分、かえってうまくいかないのではないか。「うちはうまくやってますよ」というご家庭も、もちろんあるだろうけれど。
水回りを分けることが、同居成功のカギ
うまくいかない原因は何だろうか。私が同居を決めた時、キッチンだけは別につくった。これはとても良かった。風呂場や洗濯機、洗濯物干し場などは共同だったが、この辺の「一緒に使う部分」がどうもよろしくない。原因は生活リズムが違うことであったり、誰が掃除をするのか? ということであったり、使い方の問題であったり。「妻」はそれぞれが一国一城の主なのだ、水回りにおいては。これが私が実際に同居して学んだ教訓だった。すなわち「水回りを制すれば(分離すれば)同居はうまくいく」ということ。
仕事上でも経験は生かされる。設計の仕事をしていて「二世帯ってどうですか」と聞かれることがある。自分の経験もあり、もし二世帯同居するなら水回りは別にしてしまうことをお勧めする。のちのち同居の予定があると聞けば、あとから水回りを別にできるようにしておくといいですよ、とアドバイスする。電気、水道、ガスなども別会計にできるようにしておくといい。すっきり会計も円満のコツの一つだ。
「同居」をやめて「近居」にしたら
私は数年して同居をやめて「近居」に変えた。そうしたら全てが解決した。程よい距離はお互いの関係を変え、いろんなことがとてもよい具合に回るようになった。何かあったらすぐ駆けつけることができるし、お互いにできる範囲で助け合う。といいつつ、本当は、親が元気なうちは子世帯が助けてもらうことの方が多いから「助けてくれてありがとう」という気持ちをいつも忘れずにいたい。その気持ちがあれば、きっとずっとうまくやっていけるのだと思う。
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