世界遺産/世界遺産関連ニュース

2013年新登録の世界遺産(2ページ目)

2013年6月、新たに19件の世界遺産が誕生し、世界遺産総数は981件となった。日本の物件では「富士山」が「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」と名称を変えて登録に成功し、17件目の世界遺産となった。今回は新登録の世界遺産全リスト(解説付き)、拡大された世界遺産、危機遺産リストの変更点等、第37回世界遺産委員会の概要を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

危機遺産リストの変更点

クラック・デ・シュバリエ

英雄サラディンがひと目見て攻略をあきらめ、アラビアのロレンスが「世界でもっともすばらしい城」と評したというクラック・デ・シュバリエ。近隣への爆撃・砲撃により、城壁の一部破損が報告されている ©牧哲雄

これまで危機遺産リストには38件が登録されていたが、今回新たに7件が追加され、1件が削除された。このため危機遺産の総数は44件となった。

<危機遺産リスト入り>

パルミラのローマ記念門

世界でもっとも夕景が美しい遺跡のひとつ、パルミラのローマ記念門。その美しさから「バラの街」の異名を持つ ©牧哲雄

■古都ダマスカス
(シリア、1979年、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(vi))
■古代都市ボスラ
(シリア、1980年、文化遺産(i)(iii)(vi))
■パルミラの遺跡
(シリア、1980年、文化遺産(i)(ii)(iv))
■古都アレッポ
(シリア、1986年、文化遺産(iii)(iv))
■クラック・デ・シュバリエとカラット・サラディン
(シリア、2006年、文化遺産(ii)(iv))
■シリア北部の古代村落群
(シリア、2011年、文化遺産(iii)(iv)(v))
2010年12月18日のチュニジア・ジャスミン革命にはじまる中東独裁政権の連鎖的崩壊「アラブの春」。2011年4月にはシリアに飛び火し、内戦状態に陥った。2012年9月、「古都アレッポ」のスーク(市場)で戦闘が起こり、商店の約1000軒が焼失。2013年4月にはグレート・モスクのミナレットが倒壊した。内戦による被害はクラック・デ・シュバリエ、ダマスカス、パルミラ、古代村落群などでも確認されている。今回これらの物件の普遍的価値を守り、国内外の注意を喚起するために、シリアの世界遺産6件すべての危機遺産リスト入りが決定した。各物件の詳細は以下参照。

 
■東レンネル
ソロモン諸島、1998年、自然遺産(ix)
東レンネルは西太平洋に浮かぶソロモン諸島最南の島。サンゴ礁が隆起して誕生した世界最大のサンゴ島で、テガノ湖は太平洋の島に存在する最大の湖となっている。島は熱帯雨林に覆われており、環礁や湖、湿地帯といった多彩な地形が、固有種を含む多くの生命を育んでいる。世界遺産に含まれているのは島の南端の1/3で、それ以外の地域には4つほどの村がある。今回問題になったのは森林の伐採。登録地周辺における伐採が生態系に影響を与えているとして、政府に環境影響評価の提出を求めた。

<危機遺産リストから削除>

■バムとその文化的景観
バムとその文化的景観

地震前のバム。世界遺産の登録には暫定リストへの記載、政府の推薦、諮問機関の調査などが必要で、推薦から1年半ほどかかる。しかしバムは地震による被害のため、半年ほどで緊急登録された

イラン、2004年、2007年拡大、文化遺産(ii)(iii)(iv)(v)、2004年危機遺産入り
バムは砂漠が続く乾燥地帯ながら、カナートと呼ばれる地下井戸網を整備し、東西貿易を支えるオアシス都市として繁栄した。構成資産である城塞アルゲ・バム、セイド廟、アシリ廟、カナート等は7~17世紀建設で、18世紀に放棄されて廃墟となった。2003年12月のイラン南東部地震で遺跡は壊滅。2004年に世界遺産に緊急登録されると同時に危機遺産リストに記載された。その後の修復作業により泥・レンガ造りの遺跡が安定し、管理体制も健全であることから、リストからの削除が決定した。

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