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2013年新登録の世界遺産(4ページ目)

2013年6月、新たに19件の世界遺産が誕生し、世界遺産総数は981件となった。日本の物件では「富士山」が「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」と名称を変えて登録に成功し、17件目の世界遺産となった。今回は新登録の世界遺産全リスト(解説付き)、拡大された世界遺産、危機遺産リストの変更点等、第37回世界遺産委員会の概要を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

2013年新登録の世界遺産全リスト 後編

ナミブ砂海

アプリコット色のデューンが美しいナミビアの世界遺産「ナミブ砂海」。高さ330mを誇るソサスブレイをはじめとするデューン群は世界最大級の高低差を誇る

<自然遺産>

■エトナ山
エトナ山

噴煙を上げるシチリア島のエトナ山。その活動は50万年前にはじまったといわれる

Mount Etna
イタリア、自然遺産(viii)
シチリア島のエトナ山は標高3335mに達し、地中海の島の中では最高峰で、アルプス山脈を除けばイタリアでもっとも高い山となる。57000年前と15000年前に大爆発を起こして現在見られる美しい円錐状の成層火山が形作られた。世界一活発な火山で、現在もしばしば溶岩を噴出しているが、大爆発を起こすことがないため危険視はされておらず、麓にも街がある。山に関する最古の記録は紀元前700年に遡り、以来盛んな研究が行われており、世界最高峰の監視システムが組まれている。

■タジク国立公園[パミール山地]
Tajik National Park (Mountains of the Pamirs)
タジキスタン、自然遺産(vii)(viii)
パミール山地はヒンドゥークシ山脈を中心に、天山山脈、崑崙山脈、カラコルム山脈が合わさる土地にあり、平均標高は5000~6000mに達する。ヒマラヤ山脈同様、インドオーストラリアプレートがユーラシアプレートを押し上げることで造山されており、その活動は現在も活発で、地震が多く、毎年標高が高くなっている。温帯から極地並みの寒冷地帯まで、多雨多雪地帯から砂漠まで多彩な気候が混在しており、独特な景観と生態系を育んでいる。特にフェドチェンコ氷河の雄大な景観は有名だ。

 

■新疆・天山
Xinjiang Tianshan
中国、自然遺産(vii)(ix)
タクラマカン砂漠の北にあり、温帯乾燥地の山脈としては最大規模を誇る天山山脈は、全長2500km、幅300kmの大山脈。中国・新疆ウイグル自治区の最高峰は標高7443mのトムール山で、砂漠や平原、森林、湿地、高原、永久凍土、氷河と多彩な地形が広がっている。地域によって温度や湿度の差が非常に大きく、それが景観と生物の多様性を育んでいる。砂漠に伸びる純白の稜線、ダイナミックな景観といった自然美とともに、こうした特異な生態系が評価されて世界遺産登録が実現した。

■ピナカテ・アルタル大砂漠生物圏保護区
El Pinacate and Gran Desierto de Altar Biosphere Reserve
メキシコ、自然遺産(vii)(viii)(x)
アメリカ・メキシコ国境、太平洋岸に位置するソノラ砂漠は北米四大砂漠の中でもっとも低地にあってもっとも熱い砂漠。世界遺産登録された生物圏保護区は多数の大砂丘が見られる砂漠地帯であると同時に、噴火口や種々の溶岩地形が見られる火山地帯でもあり、美しくダイナミックな景観が広がっている。乾燥地帯ながら水を通さない地層や保水力の高い溶岩石などのおかげで多数の動植物が生息しており、過酷な環境に適応するために独自の進化を遂げた固有種が多い。

■ケニア山-レワ野生動物保護区
クロサイ

レワにおいて一時はほぼ絶滅に追い込まれたクロサイ。かつてアフリカには数十万頭がいたといわれるが、現在は数千頭のみ

(「ケニア山国立公園/自然林」の拡大)
Mount Kenya National Park/Natural Forest
ケニア、自然遺産(vii)(ix)
「ケニア山国立公園/自然林」は標高5199mのアフリカ第二峰・ケニア山を中心とした世界遺産。今回はケニア山北部に広がるレワ野生生物保護管理公園が追加され、名称が変更された。この公園には森林・草原・湿地・高地といった多彩な地形があり、クロサイやアフリカゾウといった動物の重要な回遊コースとなっている。そのため1995年以前は密猟者たちがこの地に集い、クロサイなどは絶滅寸前に追い込まれた。現在は生物保護管理公園として保護されており、絶滅危惧種がその数を盛り返しつつある。

■ナミブ砂海
Namib Sand Sea
ナミビア、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
自然美、地形、生態系、生物多様性……4つある自然遺産登録基準のすべてをクリアした21件目の世界遺産。ナミブ砂漠は南北約320km、東西120kmを誇る広大な砂漠地帯で、5000万~1億年前に誕生した世界最古の砂漠のひとつ。特徴は巨大なデューン(砂丘)で、高さ250mを超えるデューン群は世界最大規模を誇る。年間降水量20~50mm(東京は1500mm)という超乾燥地帯であるため、植物の53%、昆虫の52%、爬虫類の44%、哺乳類の17%が固有種で、独自の進化を遂げている。

 

<複合遺産>

■ マロチ・ドラケンスベアク越境世界遺産地区
(「ウクハランバ/ドラケンスベアク自然公園」(南アフリカ)の拡大)
Sehlabathebe National Park
南アフリカ/レソト、複合遺産(i)(iii)(vii)(x)
「ウクハランバ/ドラケンスベアク自然公園」にレソトのセサバテーベ国立公園が追加され、上記に名称変更された。レソト初の世界遺産。ドラケンスベアク山脈は亜熱帯域から一気に3000m以上を駆け上がり、山岳風景が美しく、多彩な気候が生み出す豊かな生態系と、サン人たちが4000年以上かけて描き続けてきた3万点以上に及ぶ壁画群が評価され、世界遺産登録された。セサバテーベは多くの特徴を共有しているが、氷河の凍結・融解による浸食が築いた天然の彫刻群はここでしか見られない特異な景観となっている。


2014年の第38回世界遺産委員会では日本の「富岡製糸場と絹産業遺産群」をはじめ、中国と中央アジア諸国によるシルクロードに関する2件、6か国共同推薦によるインカ道カパック・ニャン、中国の京杭大運河、ボツワナのオカバンゴ・デルタなどが世界遺産登録に挑戦する予定だ。それらの49件のリストは関連サイト参照のこと。

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