ストレス/身近な人のストレスケア

小学生の子に「劣等感」を植えつけてはいけない理由

【カウンセラーが解説】イヤイヤ期はとっくに終わり、思春期はまだ先……。小学生の子どもたちは、無邪気に毎日を楽しんでいるように見えるかもしれません。しかし、小学時代はこの年代ならではの「勤勉性」という発達課題に必死に挑戦しています。人生において必要な有能感を育む大切さと、劣等感を植え付けないための注意点を解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

イヤイヤ期や思春期とは違う! 小学生の子ども時代に獲得すべきもの

競争する小学生

多くの新しいことに取り組む小学生時代は、自分に対する「有能感」を獲得していくことが大切です


イヤイヤ期や、反抗期、思春期に比べると、小学生の子どもは比較的落ち着いていると感じる方が多いようです。

とはいえ、無邪気にも見える子どもたちの心には、この時期ならではの葛藤や不安もあります。小学生時代の子どもたちは、何を望み、何を考えているのでしょうか?

小学生の子どもたちは、幼児期のような甘えは許されない、学校という集団の中に属することになります。毎日のスケジュールは決められており、勉強や運動などの学校活動に勤しむことになります。また、学外でも習い事や、塾、スポーツサークルなど、さまざまな活動に挑戦していくことになる時期でしょう。こうした毎日の中で、たくさんの学びに子どもながら真摯に取り組もうとするのが、小学時代の子たちです。

心理学者であるE.H.エリクソンによると、人は一生の間に、8段階の「発達課題」に対峙すると考えられています。小学時代の年齢は、第4期の「勤勉性」と呼ばれる発達課題に挑戦する時期にあたります。ここで言う「勤勉性」とは、自分がやるべきことをしっかり頑張り、成功させようと努力することです。

このように、やるべきことに勤勉に取り組みながら、「自分はできる!」という有能感を獲得していくのが、この時期の子どもたちの課題です。
 

小学生の心理……勤勉性が生かされないと「劣等感」に陥る

kodomo2

小学生時代は、劣等感ではなく有能感を育てる時期

ところが、頑張っても成績が伸びなかったり、叱られ続けたり、いじめられることが続いたりすると、有能感を得られず、「劣等感」に陥ってしまいます。自信を失って、「自分なんてダメだ」という気持ちから抜け出せなくなり、他の子どもたちより劣っているという思いが強くなってしまうのです。

劣等感を感じることは、必ずしも悪いわけではありません。劣等感を味わってこそ、「この状況から抜け出そう!」という意欲が生まれ、成長できるのです。とはいえ、「努力してもどうにもならない」「頑張っても評価をしてもらえない」という状況が続くと、強固な劣等感に陥り、自信を失ってしまいます。

したがって、小学生の子と関わる大人は、この時期の子どもが発揮する勤勉性に注目し、有能感を得られるように見守っていくといいと思います。
 

勉強や運動が苦手な子どもへの接し方 

kodomo3

「できないところ」ではなく「できているところ」に注目する

子どもには、勉強が苦手な子、運動が苦手な子もいます。すると、大人はつい「あなたは算数が苦手ね」「運動神経が鈍いから」などと言ってしまいがちです。しかし、大人から自分のダメなところを指摘され続けると、子どもは素直にその言葉を信じ、劣等感を強く持ってしまいます。

そこで、大切なのは「できないところ」に注目するのではなく、頑張っている姿勢少しずつでも伸びている、という事実をよく見て、それを伝えてあげることです。

勉強の成績が伸びない子には、テストの結果だけで「できない」と言うのではなく、その子がどのように答えを解こうとしたかをよく見てあげることです。「よくここに気づけたね!」「この問題、間違わずにできるようになったね」と本人なりに頑張ってできたこと、一歩ずつでも成功していることをしっかり見て、言葉にしてあげるといいと思います。

運動が苦手な子も同じです。「運動神経が鈍い」「かけっこが遅い」などと、結果で決めつけるのではなく、「クロールができるようになったね」「逆上がりが上手になったね」というように、できているところ、上達しているところを指摘してあげるといいと思います。また、たとえ「体育」が苦手でも、子どもは本能的に身体を動かして遊ぶことは好きなのです。体育の枠を超えた身体活動は、たくさんあります。そうした身体活動を遊びながら体験することで、自分なりの好きな運動を見つけていくこともできます。
 

子ども時代の有能感は一生の宝物 

kodomo4

「自分はできる!」という有能感は、自分を一生伸ばしてくれる

「自分はできる!」という有能感は、自立した大人になるための大切な基礎になります。有能感があるからこそ、臆せずに他人と関わり、強みをアピールし、社会のなかで自分を活かしていくことができるのです。

そもそも、人にはそれぞれ得意、不得意があって当たり前。社会の中ではお互いの得意を活かし、不得意を補い合い、協力して生きていければいいのです。しかし、人は自分に不足していることばかり気にし、自分の持つ力には注目していないものです。その上、人から「あなたはこれが苦手ね」「どうしてこれができないの?」などと言われ続けると、有能感は育たず、劣等感ばかりが植え付けられてしまいます。

何気ない毎日の中でも、子どもは「得意なこと」や「できていること」をたくさん発揮しています。ぜひそれを見出し、子どもに伝えてあげましょう。その一言が、その子の「一生の自信」につながっていきます。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます