恋愛シーンのジャズ3選
恋愛シーンのジャズ3選
あなたに、最初にお勧めするのはこの一曲です!
チキンシャック
有名日本ソウル系フュージョンバンド、チキンシャック 「チキンシャック」より「アット・テンプス」
このCDは80年代を代表する日本のソウル系フュージョンバンドの「チキンシャック」のデビューアルバムです。まずは一曲目の「アット・テンプス」から聴いて下さい。ソウルバラード調のゆったりとしたこの曲が一曲目に入っているという事により、このCDと彼らの傾向がはっきりと見てとれます。ドラムのきっかけから入る出だしから土岐英史のアルトの艶っぽさに圧倒されます。続くテーマの後の、シンプルでブルージィな山岸潤によるギターソロが終わり、いよいよ土岐のアルトソロが始まります。
土岐は誰のものでもない自分の音とフレーズでこのムード満点の曲に色をつけて行きます。特に6:50からの盛り上がりは聴いているお二人の気持ちの高ぶりを代弁するかのようです。
見つめ合うお二人の雰囲気を盛り上げるのに、この曲ほどピッタリなものはありません。土岐のソロのまま演奏自体がフェイドアウト(自然にボリュームが下がって終わりになること)してしまうのが惜しいくらいです。
この曲の題名になっている「テンプス」はこのCDが吹きこまれた1985年頃六本木に実際あったソウル系のライブハウスで、同時期に恵比寿のジャズライブハウス「ピガピガ」にいた私たちにとっても、とても気になる場所でした。(私がピガピガにいた頃のお話はこちら)
皆から「ディー」の愛称で親しまれた、チキンシャックのベース奏者デレク・ジャクソンは当時ピガピガにも良く遊びに来ており、ベースプレイと十八番の歌「火の用心ブルース」を披露してくれたものです。
その「ディー」がこのCDの録音の事をこう話していたのが印象的でした。
「今はどこでも、パラパラ一杯吹くサックスばかりだけど、トキは違う。最初に聞いた時からしびれっぱなしさ。トキほどセクシーな奴はいない」
この言葉にこの演奏の雰囲気が集約されていますね。
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次にご紹介するのはこの一曲です!
スタッフ・ライク・ザット
超有名アレンジャー クインシー・ジョーンズ「スタッフ・ライク・ザット」より「テル・ミー・ア・ベッド・タイム・ストーリー」
このCDでは何と言っても四曲目「テル・ミー・ア・ベッド・タイム・ストーリー」がオススメです。曲は出だしのコーラスによりムーディで幻想的な雰囲気でスタートします。続いてこの曲の作曲家でもある、超有名ピアノ・キーボード奏者のハービー・ハンコックのフェンダー・ローズ(エレキピアノ)によるテーマが流れてきます。
次のフルートと分け合ってのテーマ演奏もさらなる期待感をあおります。サビ(曲の中間部)の後はコーラスがシンセサイザーのような効果で糸を引く様に流れるのが印象的です。
期待感が高まるテーマの後に、いよいよハービー・ハンコックによるフェンダー・ローズのソロが始まります。するとすぐに、ハービーのアドリブ(即興演奏)と同じ旋律をストリングスが一緒に奏で始めます。フェンダーローズとストリングスはそのまままるで息の合った恋人同士のように、ぴったりと寄り添いどこまでも一緒に旋律を奏でて行きます。
二人の愛の語らいのようなアドリブのメロディは、ハンドクラップやコーラスの登場により、ますます盛り上がリを見せます。ハービーのソロを採譜して、ストリングを重ねるといった凝ったアレンジ。そしてそれと感じさせずに、心地よく聴かせてしまうのが名アレンジャー、クインシー・ジョーンズの腕の見せ所です。
夢のようなゴージャスなサウンドは、聴いている私たちを決して飽きさせません。眠らないお二人のベッドタイムにピッタリの曲と言えます。
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最後にご紹介するのはこの一曲です!
Misty
超有名ヴォーカル、サラ・ヴォーン 「ミスティ」より「ミスティ」
このCDでは、やはり有名なスタンダードの「ミスティ」が聴きもの。「ミスティ」はスタンダード・ソングとしてポップスの世界でもカバーされている名曲です。スタンダードは、映画のテーマやポップス曲が多い中、この「ミスティ」はジャズの世界からスタンダードになった珍しい曲です。
作曲は有名ピアニストのエロール・ガーナー。ピアニストとしてジャズ界では有名な彼ですが、実はピアノは独学で、譜面が全く読めないというエピソードの持ち主でもあります。
この「ミスティ」も飛行機に乗っている時にメロディを思いつき、忘れないようにホテルまで急ぎ、ピアノに触るまでメロディを頭の中で何回も繰り返していたという逸話が残っています。
生粋のジャズメンが作曲したこの「ミスティ」は、メロディの美しさはもちろんですが、高低の起伏もあって歌としては難しい部類に入ります。その難易度の高い歌をサラ・ヴォーンは彼女独特の歌いまわしで、難なくしっとりと歌い上げています。
録音当時サラは34歳。のびやかな声やビブラートにも艶があり、ヴォーカルとしても女性としてもまさに絶頂期。
サビ(中間部)に入り、サラの歌声は時に激しく、時にささやくように、涙があふれる(I get mistyと歌われます)ほど好きになるのを止められない女性の姿を歌い上げます。1:54のところで聴かせる「On my own」(オン・マイ・オウン、一人ぼっちで)という歌詞の色っぽさにはハッとさせられます。
この演奏は、サラ・ヴォーンの極めつけの名唱と共に、伴奏の有名サックス奏者ズート・シムズによるクールなテナーサックスが華を添えます。
曲の初めの深みのあるストリングスのお膳立てに乗って現れるたった2小節の短いズートのソロですが、女性をエスコートするのに、かくあるべきとさえ思えるスマートなダンディぶり。
途中に出てくるサックスのオブリガート(伴奏)といい、これしかないという位にキマッているズートに、ドレスアップしたサラはジャケット写真のようにチャーミングに微笑んだ事でしょう。
さあこのへんでお熱い二人だけの時間をほどほどにして、ドレスアップしてパーティーにでも足を運びませんか? 遠慮はいりません、おもいっきり周りの皆に見せつけてやってくださいね。幸せはどんどん拡散して行くものですから。
私も熱々のおすそ分けを期待して、パーティーに出かけてきますね。それでは、また次回お会いしましょう!
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