フィンランド/ヘルシンキの観光・お土産

ヘルシンキの記念碑・彫刻アート探訪〈シンボル編〉(4ページ目)

ヘルシンキ市街を歩いていると、至るところで気になる彫刻作品やモニュメントが設置されているのに目がいくのではと思います。屋外作品が進んで作られるようになったのは1800年代後半からで、現在では市立美術館が把握するだけでも400作品を超えているといいます。前回の〈偉人編〉に続き今回は、待ち合わせ場所としてもよく使われる〈シンボル編〉。街のランドマーク的存在のアート作品を一挙紹介します!

こばやし あやな

執筆者:こばやし あやな

フィンランドガイド


周囲のストリートにも影響力を持つ、クマ公園のシンボル像

クマ

神聖なる動物クマを表すKarhu(カルフ)という言葉を口にすることは避けられてきたため、作品の題目にも隠語が使われている

マーケットのあるハカニエミ地区の北側の丘陵地に広がるカッリオ(Kallio)地区の中心部には、クマ公園(Karhupuisto)という、心地よい屋外カフェも設置された緑豊かな市民公園があります。その名前の由来になっているのが、公園の一角にある大きなクマの石像。この像があまりに有名になり、今ではその周辺の通りに面したお店の看板などにも積極的にクマのロゴが採択されているほどです。

クマロゴ

公園周辺の路地には、このクマをモチーフとした看板やロゴがいくつか見つかるので探してみて

丸みを帯びた愛らしいクマの石像作品には、「Mesikämmen muurahaispesällä(メシカンメン・ムーラハイスペサッラ)」というやや長いタイトルが付けられてます。訳すと、蟻塚の上のメシカンメン。

今日では、クマはフィンランド語でKarhu(カルフ)。けれど歴史的にクマは神格化された特別な動物であったことから、昔はカルフという言葉を口に出すことは直接的すぎるとして厭われていました。代わって、婉曲的にクマを連想させる隠語がフィンランド全土に数多く伝わっており、そのひとつがメシカンメン(「花蜜のついた手の平」という意味)なのです。このように特別な存在として崇められていたクマは、今も昔も芸術作品やモニュメントのモチーフになる機会がとても多く、例えば国立博物館の入口でも、大きなクマの石像が出迎えてくれます。

ちなみにこの像の作者は、ユッシ・マントュネン(Jussi Mäntynen/1886-1978)という彫刻家。彼は幼少期からとりわけ自然世界に強く関心をいだいており、ヘルシンキ大学の生物博物館で働いていたこともあります。そのため、作品のテーマになるのももっぱら自然界の生きものばかり。このクマは、1931年に完成したマントュネンの代表作のひとつです。

■設置場所:カッリオ地区のクマ公園(Karhupuisto)内
■アクセス:トラム1,3B,6,7B,9「Karhupuisto」下車すぐ


老舗チョコレートメーカーの本店前ではばたく、漆黒のオンドリ

クッコ

ファッツェルカフェに立ち寄った際には、ぜひ店頭に立つ100周年を記念して作られたモニュメントにも注目してみて!

フィンランドを代表するチョコレートメーカーとして知られるファッツェル(Fazer)社。手みやげなどにも喜ばれる箱詰めの高級チョコからスーパーで気軽に買えるチョコバーまで、ありとあらゆるグレードや種類のチョコレート商品を網羅しており、高品質な上にどれをとっても万人受けするテイストなのが人気の秘密でしょうか。

カール・ファッツェル

モニュメントの土台には、ファッツェル社の創立者であるカール・ファッツェルの肖像も刻まれている

ファッツェルというのは創業者であるカール・ファッツェル氏の名前で、会社の創立は1891年のこと。現在も繁華街として賑わうクルーヴィ(Kluuvi)地区に木造のベーカリーショップをオープンさせたのが始まりで、今日では同じ通りに、ランチメニューやショップなども充実した大きなカフェを構えています。1991年には創業100周年を記念して、ヘルシンキ市に公共作品を寄贈するという趣旨で「Fazerin kukko(ファッツェルのオンドリ)」という名の彫刻作品をカフェの前に設置しました。オンドリは創業当初のロゴマークにも入っていた、いわばファッツェル社の象徴です。

この抽象的なモニュメントをデザインしたのは、ビョルン・ヴェクストローム(Björn Weckström/1935−)というアクセサリーデザイナーとしても知られる彫刻家。作品のモチーフはオンドリだけでなく、創業者カールの趣味でもあった狩猟のターゲット、ヘラジカの脊椎骨の輪郭からも着想を得ているとビョルン自身が後で語っています。

■設置場所:Fazerカフェ本店前(店舗ウェブサイトはこちら
■アクセス:ヘルシンキ中央駅から南東方向に徒歩約10分


最終ページでは、近年お披露目されたばかりのモダンなインスタレーションアート2点をご紹介!
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