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実は97%が養殖。海から食卓まで、ワカメの道のり(2ページ目)

日本のほとんどの海岸で生息するワカメ。実は私たちが食べているワカメのほとんどは養殖です。どのように育てられ、食卓にのぼるまでにどのようなプロセスがあるのかをご紹介します。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

風・潮の流れ、海の豊かさで変わるワカメの質

クロロフィル,緑色,ワカメ

湯通しするときれいな緑色に変わります。

今回見せていただいた水産会社は、水揚げされたワカメの一部はそのまま加工業者に、多くは同社で加工・製品化して、直接流通会社に、あるいは契約されている料亭などに卸されています。

この時期に集中して収穫しますが、いったん、塩漬け保存されたワカメも、注文に応じて選別し、芯抜きやの処理を施して、年中出荷をされます。

海藻は、自然のあるがままというイメージがありますが、養殖する際には種となる胞子を種苗し成長させ、どのような環境で育てるかが味や食感を左右します。

海の水位、潮の流れなどで、茎の長さや、肉厚、切れ込みの大きさ等も変わりますから、それを想定して植え付け、また栄養が均一にいきわたるように、密度を考えて間引きするなど、農作物と同様に育てているのです。

とはいえ、人の力ですべてコントロールできるわけではなく、風の流れが潮の流れに関わるため、その年の気候により出来が左右されるそうです。鳴門ワカメは、潮の流れがぶつかるためよい品質のよい名だたるブランドですが、近年は海の栄養が減ってきて、色の薄いものもできるなど、影響が出ています。

高齢化・後継者不足に悩む現場

冷水洗浄,ワカメ

冷水で冷やしたワカメ

美しい海、きれいな海を守ろう、とはよく言われる言葉ですが、見た目のきれいさよりも豊かな海にすることが大切という、水産会社の方の言葉が響きました。

海を豊かにするためには、山や森を豊かにすることにもつながり、私たちが日々いただく食べ物の背景には大きな自然や環境全体につながっているものなのです。

現在、ワカメは、韓国や中国などからも輸入され(2011年は4万2615トン/水産研究センター)、国産ワカメは生産量も減りつつあり、価格も低迷しています。DNA鑑定で見ると、種は同じでも、環境が違えば、海の栄養、潮の流れが異なります。ブランドワカメでも、安価な物の中には、輸入品が混ざっているものがあることもあるそうです。

短い収穫期間に、すべて水揚げしなければならない上に、寒い季節の水仕事や重労働で、人員の確保は難しい問題だそうです。人手や人件費を抑えるために自動化を図ると言っても、高齢化や後継者不足の地域では高額な機械設備を揃えるのも負担となります。そういう問題を抱えつつ、安い輸入品が入ることで、また特に三陸地域等では震災の影響もあり、ワカメ養殖業はますます業者数が減っています。

今回見学をさせていただいて、困難な状況にあっても、上質の国産ブランドを守りたいと、使命感をもってワカメを育て、加工・出荷されている生産者の思いを知りました。こうした「この人のつくるものなら安心」という顔の見える関係を、一つずつ繋ぎながら、私たちもその思いに応えて、日々の食卓野中で大切にいただきたいと思います。

関連記事/
ワカメに含まれている栄養成分等については、「春を告げる生ワカメ 注目の栄養成分とは?」をご参考になさってください。

参考/
独立行政法人 水産総合研究センター
養殖ワカメの収穫および塩蔵加工作業調査(水産工学研究所)
その他
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