ブランドを語らない唯一の大手「住友不動産」
ビートルズの名曲「Across the Universe」をBGMに、三井不動産がCFを流したのは2000年頃だったか。分譲マンション初のグッドデザイン賞を同社が獲ったのもその年である。以後、野村不動産が「プラウド」を、東京建物は「ブリリア」を立ち上げ、業界はブランド競争の時代に突入した。新会社三菱地所レジデンスは、竹内まりやのメロディーでテレビコマーシャルを打てば、昨年来東急不動産が「ブランズ」の宣伝を強化。マイホーム購入意欲の湧き上がる新年のTVCM枠争いは年々熾烈を極めているようだ。
そんななか、企業PRやマンションブランドの連呼にほぼ興味を示さない大手デベロッパーがある。住友不動産だ。「シティハウス」に「シティテラス」、高級物件に名付けられる「グランドヒルズ」など名称のガイドラインを設け、十分な実績を有しているにも関わらず。ほとんどといっていいくらい物件告知以外のコストを投じない。グッドデザイン賞獲得にも、少なくとも数年前は「商業的なものでは?」(同社関係者)と意に介さなかった。見様によっては、稀有な存在ともいえる。
独自路線を歩む
ブランド戦略だけではない。住友不動産には、他社とは違う、もっといえば正反対とでもいうべき事業の方針が少なからず存在する。例えば、「即日完売を良しとしない」文化。マンションデベロッパーは、その事業資金の(いわば借入金の)多さから、資金回収の滞りを最も嫌う。売り出したらできるだけ早く契約を済ませ、竣工即全戸引き渡しを目指したい。したがって「ソッカン(即日完売のこと)」は、普通なら営業の合言葉となる。しかし、住友不動産の場合はソッカンは褒められるどころか、値付けが甘かった(安かった)ことを意味するらしい。その解釈はこうだ。
そもそも分譲住宅は、現地周辺の住民層をターゲットにした商品であり、地元の持ち家ニーズを取り込むことが販売活動の基盤となる。その際、一気に大量供給を行う分譲マンションが、早期完売を優先してしまえば、値段を弱含みに設定したり、広告コストが膨らんでしまうといった危険性がある。つまり、「ソッカン」信仰は、利益率抑制のリスクを孕んでいるということだ。多少時間をかけてでも、自然発生する地元需要を滞りなく取り込むことができれば、事業収支は自ずと高まる。具体的には、竣工時に7~8割程度の売れ行きで十分との見解である。