↑古い竹製の中国の椅子(右)とハンス・J・ウェーグナー氏のThe Chinese Chair
実際に椅子に座ってみるとディテールへのこだわりがわかる。
一本に繋がった肘掛けは、座る人が(座面の上で)自由に動くことができるように弧を描いて身体を優しく包み込む。
すべすべとした感触のローズウッド材の肘掛けの「細さとしなやかな曲がり」が、手に馴染んで心地よい。
↑座面と脚と前台輪
ゆったり目の座面(平板)には、革シートのクッションが乗せてあり、椅子全体の座り(安定感)と高級感を演出している...もちろん、人の身体を優しくサポートするには十分な厚さ(薄さ)である。
前台輪には中国特有の台形モチーフを彫り込み、構造と意匠を同居させたデザインになっている。もしも、ここが単なるフラット面だったら、緊張感のない椅子になっただろう。
意匠には時代や地域性を表現する性格があるが、海をこえ東洋のソレが西洋(ウェーグナー氏)の感性と融合してバランスを生み、モダン(現代的)な造形を創り出す。
←上部から先端に向かって細く絞った脚
ウェーグナー氏の椅子はその製作過程で、熟練工の職人業と割切った機械作業の組合わせが特長である。
しなやかにカーブした肘掛けに比べて、脚の大部分は柱型で、方向性や強度を保つ為に先端にむかってテーパーをとっている(細める)。
これは機械の旋盤加工によって比較的単純な製作方法で造られている。
彼は中国椅子を吟味した自国の素材や製作方法に置き換える作業・・・つまり、リ・デザイン(再構築)をくり返してこの椅子を生んだ。
言わば東洋と西洋の折衷デザインである。
それにしても、なんて上品で綺麗な椅子であろうか・・・ウェーグナー氏の感性がピリピリと伝わってくる。
■UP#019
The Chinese Chair/チャイニーズチェアー
・1945製作/デンマーク
・SIze :W 570 D 550 H 815/SH 455
・Material:ローズウッド&革
・Designer:HANS.J.WEGENE/ハンス・J・ウェーグナー
・Product :Fritz Hansen/フィリッツハンセン(DK)
・Shop :Nordicform/ノルディックフォルム
・Price :¥1.050.000-
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