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#028 「和」のデザイン、格子の椅子

ここ数年、海の向こうでは空前の「和」ブーム。我が日本でも、日本のオリジナリティーを見直そう!的情報が、マスコミに登場されはじめています。こだわり雑誌:Pen」にも掲載の「和」の椅子をご紹介します。

石川 尚

執筆者:石川 尚

ファニチャーガイド



懐かしく、モダンな美のかたち、「和」のデザイン・・・というタイトルで始まる雑誌「Pen 」が目に入った。男性雑誌にもかかわらず、研ぎすまされた視線で美しい逸品を追う内容が多くのファンを魅了している。
今回は「和」のデザインをキーワードに、暮らし・インテリアグッズ、とりわけファニチャーの特集である。
海の向こうでも、空前の「和」ブーム・・・ミラノのサローネでも数多くの「和」テイストファニチャー情報が届いている。自然の素材を洗練された意匠で形づくられたそれらは、目まぐるしく生きる現代人にとって、温かみと安らぎをもたらすのであろうか。
さて、この「Pen」にボクのデザインした椅子や収納箱らが掲載されている。
なかでも、(ガイド記事)一家一脚・椅子物語シリーズでご紹介した「陰影が美しい生きる椅子」・『格椅子・KOHSHI』が、凛とした佇まいのダイニングシーンを飾っている。

そこで今回、どうしてこのようなファニチャーのデザインを始めたのか・・・についてお話しいたします。(椅子のデザインやディテールについては、陰影が美しい「生きる」椅子 を!)

「デザインをも激変させてくれた、運命の出会い」


プロになって数年後、オーストリアのウィーンに行く機会があり、世界的にも著名なメガネデザイナーのRobert・La・Roche氏にお会いすることがありました。様々な会話の中でこんなやりとりがあったのです。
『君はどんな仕事をしているのかね?』と聞かれ、日本から持っていった作品を見せると『コレは60年代のアメリカ、これは70年代のヨーロッパ、これは80年代のドコどこのデザインだね』と指摘され唖然。。。。。
自分の創っていたものが、無意識のうちに無個性でありがちなデザインになっていたわけです。
ボクがデザインの勉強をしたり、デザイン業務に従事した当時は、指導する側(先生や上司)にも海外に対する憧れやコンプレックスが根強くあり、いつの間にかそれらを吸収しデザインするようになっていたのです。

↑引用:「和」のデザイン 小山 織監修の特集 Pen 122号、p38.39(阪急コミュニケーションズ社発行)


Roche氏は続けて、『日本には日本にしかない素晴らしいアイデンティティーがあるのに、どうして日本独自のデザインをしないのか。
私が日本人になれないように、君はイタリア人やフランス人になれないんだ・・・・・デザインだって同じだよ』と諭され、これまた目から鱗が落ちる思いでした。

帰国後、「日本のアイデンティティーとはなんぞや?」と問いかけ、時間をみつけては旧い町並の佇まい、昔からの道具、家具など見直しをはじめたのです。出くわすもの・・・それは以前から当たり前に見慣れたもの、しかし、そこら中に「デザインの原石が。。。。。」状態。とくにボクにとっては、日本の家屋や建具、浮世絵、書などに見られる巧みな「線」の存在が大きかったのです。
日本のデザインの繊細な美しさと工夫の奥深さに感動し、新しい創作活動をはじめた出会いでした。

そんな経緯の延長線上にこの格子の椅子、『格椅子/KOHSHI』(格子と椅子を組み合せた造語)が生まれたのです。

生活を愉しみ、洗練された美意識と機能と工夫をかたちにして、育まれた、たおやかな「和」の文化。現代の暮らし空間に刺激的な存在として佇むデザインなのです。


■UP#026
格椅子/Kohshi

・2003製作/日本
・SIze  :W 730 D 530 H 780/SH 420
・Material:メープル材
・Designer:石川 尚
・Product :ishi&Fcompany/日本
・Shop  :Toine.jp
・Price  :¥141.000-








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●一家一脚・椅子物語バックナンバー
■#023/今世紀初頭を投影する危うい椅子
■#022/「和」のデザイン、格子の椅子
■#021/ステイタスシンボルとしての椅子
■#020/皮膚のように封印した椅子
■#019/ポップアート化した最初のソファ
■#018/浮遊感漂う氷解のソファ
■#017/『建築家』を決意した椅子
■#016/段ボールの塊が変身した椅子(下)
■#016/段ボールの塊が変身した椅子(上)
■#015/椅子取材裏話『グッと寄って!』
■#014/殻をやぶったピュアーな椅子(下)
■#014/殻をやぶったピュアーな椅子(上)
■#013/中国を想い慕って創造した椅子
■#012/続・戦争から生まれた椅子(下)
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■#011/スチールと格闘した先駆者の椅子
■#010/学生が一脚ずつ所持した椅子
■#009/ゆ~らゆら、心も揺れるスツール
■#008/戦争から生まれた椅子(下)
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■#007/日本を愛したフランス人の椅子
■#006/建築のアクセサリーとしての椅子
■#005/独身者?のための椅子(下)
■#005/独身者?のための椅子(上)
■#004/陰影が美しい「生きる」椅子(下)
■#004/陰影が美しい「生きる」椅子(上)
■#003/一筆書きの温もりのある椅子(下)
■#003/一筆書きの温もりのある椅子(上)
■#002/どぉ~ンとあぐらがかける椅子
■#001/ケネディを大統領にした椅子(下)
■#001/ケネディを大統領にした椅子(上)



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(C)2004 Copyright & Photo by イシカワデザイン事務所

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