首都圏の交通機関共通の、切符(一回券)の仕組みとルール
地下鉄のホーム手前には、いわゆるゲート付きの改札機がない代わりに、電子カードを押し当てるための機械が立っている。不正が見つかると容赦なく高額な罰金を取られるので注意
■料金は、市をまたいだ瞬間に変動する
ヘルシンキ・エスポー・ヴァンターなど首都圏内の各都市で、1つの市の「中だけ」を移動する場合(Sisäiset:シサイセット)はどこまで行っても均一料金、2つ以上の市を「またいで」移動する場合(Seutu:セウトゥ)は、またぐ市の数に応じて料金が上がります。つまり、ヘルシンキ中央駅を発車する同じバスに乗っても、ヘルシンキ市内の停留所で降りるのか、ヴァンター市内にある国際空港前で降りるのかで、購入切符が変わってくるのです。
また、すでにヘルシンキ市内の有効切符を持っていながら市外に出る場合、追加料金を払うのではなく、出発時点に改めてSeutuチケットを買い直しておかなければいけない、というルールにも注意。中心部から離れた場所への移動を考えている場合は、目的地がどこの市にあるのかを、あらかじめチェックしておく必要があるということですね。
地下鉄駅入口付近にある自動券売機。一回券は青・ピンク両方の券売機から購入可能
Kertalippu(ケルタリップ)と呼ばれる一回券は、ヘルシンキ市内では60分間、2つの市をまたぐ場合は80分間、何度でも乗降や別の乗り物への乗り換えが可能な単独券。7~16歳は半額のチケットを購入可能です(7歳未満は無料、またベビーカーや車椅子を押している大人1人分も無料)。この一回券を購入する場合、ヘルシンキ・ヴァンター間のように2つの市をまたぐ際のチケットは車内で運転手さんや車掌さんから直接買う場合は、乗り物に関わらず一律5.5ユーロ、街の要所要所に設置してある自動販売機で前もって買えば、一律5ユーロとなります(※2017年5月時点)。
いっぽう、ヘルシンキ市内移動限定の大人一回券は、2017年6月時点で、車内で直接買う場合は乗り物に関わらず一律3.2ユーロですが、自動販売機で前もって買えば2.9ユーロ(トラムのみ利用する場合の一回券は2.5ユーロ、スオメンリンナ行き市営フェリーの12時間有効の1回往復券は5ユーロ)と、若干割安になります。
ただし、切符の自動販売機はすべての停留所に設置されているわけではないのが難点です。少なくとも、近郊列車や地下鉄の各駅や、バスの大きな発着ターミナル、利用量の多いトラム停などでは、共通の自動券売機が見つかります。また、券売機で一回券を買う場合、購入時の時間が有効期限カウントの開始時刻となってしまうので、買うタイミングには気をつけなければいけません。さらに、通常の一回券は先述したように1時間有効ですが、4.4ユーロで2時間有効のチケットも券売機で買うことができるようになりました(市を1つまたぐ場合の2時間有効券は7.5ユーロ)。
券売機以外の購入方法として、もし現地で通話可能な携帯電話を所持している場合、SMSで16355宛てに"A1"とだけ書いたテクストメッセージを送信すれば、一律2,6ユーロでチケットを購入できます(課金は、プリペイド携帯なら残金から引かれ、後日請求の場合は次回の請求書に課金される)。購入すると、テクストメッセージで有効期限の書かれたEチケットが送られてきます。
開閉するゲートなしに人がすいすいホームへ吸い込まれていく光景は、ちょっと不思議に映るかも?
例えば地下鉄には改札ゲートらしきものも見当たらないし、トラムでも車内で切符を見て回る車掌さんは存在しません。切符は、有効期限内のものを車内で「所持」さえしていれば問題ないのです。これでは日本の感覚だと「不正し放題なのでは?」とさえ思ってしまうかもしれません。けれどフィンランド交通機関の基本姿勢は「信任性」。あくまで乗客の良心と信頼関係において、このおおらかなシステムは機能しています。
とはいえ時々検査員の集団が切符の抜き打ち検査にやって来て、不正乗車がばれると容赦なく80ユーロ(2017年6月時点)の罰金を支払わされます。悪意はなくとも、一回券切符はレシートのような簡易の紙切れなのでついなくしがち。けれど、検査員に切符の提示を求められたときにすっと応じられるよう、いつでもきちんと携帯しておきましょう。
※より詳しい切符購入情報や最新の料金検索にはHSL公式サイト(英語版)を参照ください
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