香水の歴史……香りのはじまり
香りは、宗教的目的として、権力を表す小道具として、また人々を魅了する美容目的として使用されたのが、はじまりです。
「香り」を表す「Perfume」はラテン語の「PerFumum」(煙によって立ち昇る)が語源であると言われています。火によって生じる煙は、香りとともに天に昇っていき、それがどこか、神と通じるものがあったそうです。
古代エジプトでは、香料は神聖で悪を排除し、悪から身を守るものとされ、神への供物の防腐目的として、また宗教的な目的に多く利用されていました。
また一方で、香りの持つ神秘的な力は宗教的な目的のみに留まらず、特権階級の人々の間では、権威を表す小道具のひとつとして、また人々を魅了する美容目的でも使用されていました。
クレオパトラと香り
香りの神秘の力を愛用し、その力を大いに利用して権力の座に就いたのが、世界三大美女のひとりクレオパトラです。紀元前1世紀頃の古代エジプトでは、香料産業が発達し、近隣国との貿易も盛んに行われていました。クレオパトラは自分専用の香料工場を持ち、毎日、バラの香水風呂に入り、寝室にはバラの花を敷き詰めていたそうです。1回に使う香料は現在の価格にして数十万円だったとか。バラにムスクなどの動物性香料をブレンドした香油を体に塗り、カエサルやアントニウスというローマ帝国屈指の英雄を虜にしたと言われています。
そして、香りの文化は瞬く間にヨーロッパの各国へ伝わっていきました。
アルコールの発明
もともとは、錬金術のために発明された「水蒸気蒸留器」 これにより、香水の文化が大きく広がりました
さらに同時期、同じ蒸留器で発酵物からアルコールが抽出できるようになりました。アルコールのアル(al-)は、アラビア語に由来すると考えられています。
また、アルコールが発明されるまでは、油脂で香料を溶かして用いられる香油やポマードが主流でしたが、アルコールが発明されてから、「香水」の文化が広まりました。
香水のはしり
アルコールベースの香水で、レシピの残っている中で「最も古い香水」と言われているのが、ハンガリー王妃のために作られたハンガリーウォーター(若返りの香水)です。14世紀頃、70歳をすぎたハンガリー王妃エリザベートに献上され、入浴や洗顔や化粧などに「ハンガリーウォーター」を使用したところ、持病のリウマチが治り、更には、美しさも取り戻し、ポーランドの若き王から求婚されたという伝説があります。
現存するハンガリーウォーターのレシピによると、新鮮なローズマリー(ブランデーとともに蒸留してつくられたもの)、ラベンダー、レモン、ミント、セージ、マジョラム、ネロリ、ローズなどを加えたもので、当時は「香水」としてではなく「薬」として利用されていたそうです。
香水のはじまり
16世紀、フランス王アンリ2世に嫁いだ、フィレンツェのカテリーナ・デ・メディチは、サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局で処方された香水「L‘acqua della regina(王妃の水)」を持参したそうです。当時、フランスで使用されていた香水よりも繊細で軽やかだった為、貴婦人達の間で大流行し、これによりイタリアの香水製造の技術がフランスに伝わり、パリに初めての香水店がオープンしました。
近代香水の夜明け
「フジェール ロワイヤル」の「フジェール」とは、フランス語で「シダ」という意味です
当時、シンプルな香りが主流でしたが、科学の発達により独創的かつ芸術的な香水が、世に沢山生まれました。特に19世紀後半は、熱狂的な科学発見の時期を迎え、研究者達は、科学的な新素材を作り出しました。
「近代香水」で、まず歴史的名香としてあげられるのが、ウビガン社の「フジェール ロワイヤル(Fougere Royale )」です。フゼア系の語源となり、最初に 合成香料クマリンを使用した、神秘的で高貴な香りだとか。その影響は、ゲランのジッキーやパコ ラバンヌなど数多くのフゼア系フレグランスの祖先と言えるのではないでしょうか。
このように、合成香料の発明で、世界中で大量生産され、日本でも手頃な価格で香水が手に入るようになりました。現在では、自然界に存在しない香り成分(ニューケミカル)も創り出されるようになり、独創的な香水も数多く見受けられるようになりました。
一方、素材・製法などをこだわりハンドメイドに近い贅沢な香水(メゾンフレグランス)も、最近特に人気と需要があるようです。
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