マンション購入術/マンション購入の失敗・トラブル

「総和地所」が破産 根深いリーマンショックの後遺症(2ページ目)

年明け早々、倒産ドミノの再燃を予感させるニュースが飛び込んできました。「ロータリーパレス」シリーズで知られる総和地所が、東京地裁より破産手続きの開始決定を受けたのです。マンション分譲事業の不振と、資金調達環境の悪化が企業の継続を困難にさせました。リーマンショックの根深さを思い知らされる出来事です。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド

「夢」を売るのが業者の使命  総和地所の破産が“氷山の一角”でないことを願う 

私ガイドは、上段で「4年以上前のリーマンショックの後遺症が、今年2013年になって再発した」と述べましたが、なぜなら、当時の“ドミノ倒し”と揶揄(やゆ)されるほどの異常事態(マンション不況)が思い出されたからです。2008年と2009年は多くのマンション分譲業者やハウスメーカーが倒産した年でした(下表参照)。

経営破綻したマンション分譲業者の一例

 

総和地所が不協和音を発し始めたのも、この頃です。当時は、全世界的な金融危機により金融機関が融資態度を硬化させており、不動産向け融資は厳しさを増していました。資金調達環境の悪化により、運転資金を確保できない分譲マンション業者が次々と“自滅”していったのです。リーマンショックを契機とした金融収縮と大幅な景気後退が、マンション不況を生み出していたのです。

総和地所もご多分にもれず、こうした影響を受けました。上場廃止を迫られていた2010年2月期、同社は分譲マンション3物件(42戸)を抱えていましたが、不動産市況の冷え込みにより販売の進捗状況は思わしくなく、完売に至らないことから、自社の営業人員による販売だけでなく販売会社を活用し、さらに、営業社員以外の本社社員の販売応援を実施して販売達成に向けた努力をしてきました。

しかし、収益性の高い事業を積み重ね、赤字体質からの脱却を目指すも、企業の継続には不確実性が多く、監査法人からの意見表明を得るのも困難な状況でした。同社は金融機関と建設会社にも債務を負っていたため、リスケジュールおよびリファイナンスを前提に新たな決済条件を決めるのも容易ではありませんでした。そのため、資金調達が大幅に制限されるなか、4年以上にわたって続けてきた延命治療もむなしく、末路は自己破産への道を選ばざるを得なくなりました。

かつて、私ガイドも分譲マンション販売をしていた経験があり、業界の内情をよく知るだけに、こうした出来事が起こると残念で仕方ありません。特段、感傷に浸るわけではありませんが、同じようなニュースはもう聞きたくないのです。分譲マンション業者の使命は「夢」を与えることです。「夢」を売るのが商売です。アベノミクスによりデフレ脱却期待が高まる中にあって、総和地所の自己破産が“氷山の一角”でないことを、私ガイドは願うばかりです。
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