Masa Uekiは西麻布に移転し、Azur Masa Uekiとして営業中です。

研ぎ澄まされた新しいフレンチの世界へ

かつて神宮前に「レストランJ」と」いう人気のフレンチがあった。植木将仁シェフの繰り出す輪郭のはっきりしたその料理にファンは多く、最高潮の時にビルの都合で閉店に至ったことはなんとも惜しまれた感があったことを思い出す。

その後、植木氏は軽井沢のガストロノミーレストランを経て、東京に戻ってきた。そして広尾にレストランを復活させるに至る。しかし、彼の食べ手を圧倒する迫力さえ持つ料理と環境そして価格がうまくかみ合わずして、ほどなく運営会社が撤退。

しかし、2012年暮れに銀座に新しいコンセプトを持って復活の狼煙を上げた。それもとても静かに、恐ろしいほど目立たなく。
銀座

椅子の形が上質さを表現する

自らの名前を冠した「レストラン マサ ウエキ」は銀座四丁目交差点から東銀座方面に進んだすぐのところにある。タテルヨシノの入っているビルの向こう隣。一瞬銀座の喧騒が消えるエリアでもある。看板もなく(近日中に製作とのこと)出ていないのだが、お迎えのスタッフが待機しており、エレベーターで5階のダイニングへと導かれる。

そのドアが開いた瞬間から、異次元空間とも思えるアプローチを進み、その先の白い世界に入り込む。煌く非日常空間というより、研ぎ澄まされたモダニズムとプライベート感。高級アパートメントのダイニングルームにも思える空間だ。

無駄な装飾はほとんどなく、奥の黒いピアノの佇みがいいアクセントになっている。ピアノが置いてあるレストランはあまり好きではないのだが、ここでは料理やワインと共にバッハのゴルドベルグを聞きたいと思ったほどの気持ちになる。

メニューは2コースのみ。好き好みは別にして選択の余地はない。植木氏の感性のままその日のメニューが決められていく。見せ方は「言葉」だ。
銀座

ウッドボードに張られたメニューは毎日変わる

アミューズに当たるものは、「艶なるうたげ」とあり、その下に英語で、「Prologue of the meal. Poached Shirako and Kyoto taro potate Japanese grapefruits and radish dressing」と。

短い日本語で料理を表現し、料理自体は英語で表記される。最後のプティフールは「月光」で締め括られる。「何が出てくるのだろう」というゲストの好奇心は否応にも高まり、そして見せ方や素材の組み合わせ、そして味わいのシンプルさ、複雑さに驚きが続く。

料理を見ていこう。