個性的な都内フレンチの新店3選!

2016年以来、日本におけるフランス料理の進化は加速度を増している。進化とは、変わらぬものと変わるものの融合体。伝統と革新という言葉だけでは言い表すことができない世界がある。

今回は2016年秋から2017年3月にかけて新規開店した食にこだわる大人のためのフレンチ3店をご紹介。それぞれの持ち味を出して、これからさらに独自の世界を創り出して行くだろう。

AZUR et MASA UEKI(アズール エ マサウエキ) 【西麻布】
Chevalier du Vin(シュヴァリエ・デュ・ヴァン) 【四谷三丁目】
KABCO (カブコ) 【六本木】


「AZUR et MASA UEKI(アズール エ マサウエキ)」に見るフランス料理の世界観

料理人、植木将仁。初めて会ったのは神宮前「レストランJ」の時代だったか。路地裏にある小さなレストランだった。その当時からエッジの効いた料理を繰り出し、この人は料理を作るためだけに生まれてきたのだろうなんて思ったものだ。その後彼は軽井沢、銀座と華やかなレストランを経て、2017年3月西麻布に再び輝く場所を確保した。
西麻布

シェフ、植木将仁の名前はいつもここにある。

私がこのレストランをお勧めする理由はその料理がもたらす圧倒的な独創性にある。

一見強面に見える彼の料理はガラスのように繊細で、そして創造力豊かでいつも驚きがある。調理技術は言うまでもないが、ガストロノミーという現代フランス料理を植木フレンチとして独自のスタイルで昇華し続けている気がする。

「一皿の料理は残らずはかない。」どんなに綺麗に盛り付けてもしばらくするとまっさらな皿になる。そのはかない一瞬一瞬に突き抜けるエネルギーを注ぐ姿は、厨房をみると進化するフランス料理に行きつく。生産者の顔が見える素材、そしてそれを活かす技術。彼の手は休むことなく動き続ける。
西麻布

葡萄の樹の枝につけられた飴細工のアミューズはちょっとしたサプライズ

料理はいくつかのアミューズから冷前菜、温前菜、魚料理、肉料理と絶え間ないストーリーのもと静かに運ばれる。そこには驚き、安心、憂愁、微光、慈愛、そして最後には誰もが持つ幼いあの頃の思い出が寄り添う。
西麻布

稚鮎のフリットはまるで清流を泳いでいるかのように現れる

抽象的な表現が続くが、彼の料理を一つひとつ解説するほど愚かなことはない。強いて書き連ねると、能登の極上の椎茸はただそれだけで五感が色めき立ち、稚鮎のフリットのプレゼンテーションには息を飲み、伊豆から届く鹿の藁焼きとソースポワブラードには郷愁と共に変わらぬフランス料理の世界観をみる。
西麻布

大きなピクニックボックスにはプティフールがびっしりと

アメリカのワインとのマリアージュに満たされ、夜が深くなるころにはプティフールのバスケットが登場だ。小さなお菓子が所狭しと並び、気持ちは子供のころに帰るようだ。春はピクニックに最高の季節じゃないか。バスケットにお惣菜を入れて公園に出掛けよう。

AZURE、そして植木氏の料理は単に食事をしてワインいただく以上の「コト」を感じさせてくれる場所でもある。

初夏の爽やかな夜に気持ち高めて訪れたい一軒だ。

<DATA>
AZUR et MASA UEKI (アズール エ マサウエキ)
住所:東京都港区西麻布2-24-7 西麻布MAビルディング1階
予約電話:03-6805-1147
営業時間:17:00~23:30(22:00 Last in)
定休日:日曜日
月替わりのコース:15000円(税別・サ10%別)
地図


「シュヴァリエ・ド・ヴァン」の語られるべきフランスの郷土料理

伝統的フランス料理という言葉にしばしば戸惑うことがある。伝統的日本料理という言葉を聞いたことがないからかもしれないが、現代のフランス料理は私がフランス料理を好きになった20年前からは想像もつかない変化を遂げている。クラシカルな「伝統性」をちょっとずつ変化させて驚かせてくれるのがフランス料理のいいところなのかもしれない。
ワイン

看板はフランス、ワイン、そしてドミニク・コルビを表現している

私がこのレストランをお勧めする理由は、その料理がもたらす揺るぎないフランスの魅力があるからに他ならない。

巨匠ドミニク・コルビ氏が取り組むのは「和」と「伝統」だ。同じビルの2Fのフレンチ割烹ではバターやクリームを使わないヘルシーなフレンチ、そして3Fでは「伝統的」フランスの郷土料理を楽しむことができる。日本と同じくフランス料理と言ってもベースは地方料理。それを現代風にアレンジして今に引き継がれてくる。
フレンチ

フランスの田舎にあるレストランを忠実に表現した店内

3Fのシュヴァリエ・ド・ヴァンでは月ごとにテーマを決めて地方の料理が繰り出される。3月はノルマンディー。シードルを使ったソースやバターと白ワインやクリームを重ねたソースが特徴ある料理を表現する。

豚の内臓(胃袋)をシードルと野菜で煮込んだ前菜。シードルとトマトが溶け込む穏やかな酸味がワインと共に味覚は一気にノルマンディーへ。ワイン用の葡萄が採れないことからノルマンディーはリンゴを栽培し、シードルを生産している。やや濁った色合いと酸味の効いた独特の味わいは料理にもふんだんに使われ、白ワインとは違った旨みのあるソースを作り出す。
フレンチ

内臓料理をモザイク状に表現したところにフランス料理の今を見る

シャルキュトリーの一種でもあるアンドゥイエットは古典的な料理。しかしここでは豚の内臓や耳を見た目綺麗に散らして、味わいも塩加減を抑えて作られる。「ぎゅっ」とした旨みをもっと感じるにはもう少し厚みが欲しいところだが、お願いすればおかわりもできるかもしれない。
フレンチ

蒸した白身魚のふわりとした食感にフランス料理の優しさを見る

メインディッシュは仔牛のローストにシードルとバターを効かせたソースを。私にとってはこれぞ、ザ・フランス料理。柔らかな仔牛の食感と優しい味わいにこのソースは定番中の定番。付け合わせのポテトフリットも丁寧に仕込みがなされ、実に味わい深い。深く長いソースの余韻にワインを加えてゆっくりゆっくりいただく幸せがある。
フレンチ

これぞ伝統的フレンチのメインディッシュ!

ここの空間はとても穏やかだ。ブルゴーニュにある田舎町のビストロのような気もするし、フランス人の友人宅のような気もする。ゆっくりゆったり新しい伝統に包まれて美食な時間を過ごしたい。

最後なったが、ここのもうひとつの魅力はワインにある。オーナーの南氏が集めたワインセレクションは、特にブルゴーニュ好きにはたまらないリストだろう。お値段も手ごろなのが嬉しい。

フランスのエスプリをしっかり感じることができる、まさに食とワインを楽しむ大人の世界がある。

<DATA>
Chevalier du Vin シュヴァリエ・デュ・ヴァン
住所:東京都新宿区荒木町2-9 MIT四谷三丁目ビル3F
予約電話:03-6868-5665
営業時間:ランチ11:30~14:30 (L.O.13:30) 、ディナー18:00~23:00 (L.O.22:00)
定休日:土・日・祝
ランチコース:1500円~、ディナーコース:5000円、8000円、10000円(税込)
地図
四谷三丁目駅(丸ノ内線)から徒歩3分、曙橋駅(都営新宿線)から徒歩7分、四ツ谷駅(JR・南北線)から徒歩10分


「KABCO(カブコ)」が創りだす日本発フランス料理の姿

熟成肉のブームが続いているようだ。肉の中にある酵素が熟成によりたんぱく質をアミノ酸に変えて柔らかみと旨みを醸し出すというもの。しかしながら熟成肉の定義があいまいな中、それが旨いかどうかは、素材、熟成環境や技術、そして料理人のウデによることは言うまでもない。
六本木

Kanzaki Aging Beef Crossing Oceanの頭文字を取って名付けられた

ただ、生産の現場をみていると、生産環境の変化や高齢化といった世の趨勢などにより酪農家の数が減少しており、「肉の生産」は非常に厳しい状況が続いていることは見逃せない。そんな状況の中、自ら育てた牛を自ら調理し、飲食店という消費の場を作りだす生産者も徐々にではあるが増えている。

ここでご紹介する「KABCO」は、親会社である「格之進」が岩手県一関で自ら生産する牛を「門崎(かんざき)熟成牛」と名付け、生産。それを都内で消費させるべく幅広く飲食店を展開する唯一のフレンチ業態レストランだ。
カブコ

店の前には広場があり、とても開放感に満ちている。

レストランのテーマは岩手の素材。それも牡蠣と熟成肉に絞り、これまでなかった新しい組み合わせの料理を味わうことができる。

私がこのレストランをお勧めする理由は「肉」と「牡蠣」いう素材ががもたらす新しい魅力と可能性が感じられるからである。。

軽く火を通した牡蠣をどう表現すればいいか。それを包む熟成した赤身肉をどう謳えばいいのか。立体的な器に乗る海と山の合作。味付けは最小限にほんのりと。ほのかに漂うの海の香りと山の風。しかし、それを味覚のストライクゾーンのど真ん中に投げ込むにはかなりの技術がいるはずだ。
熟成牛

一度食べると記憶に残る熟成牛と牡蠣の組み合わせ

ゆっくりとローストされた赤身際立つ門崎熟成牛は海ぶどうが持つ天然の塩味を纏う。素材のクオリティと熟成させる加工技術は見事。しかしそれ以上に記憶に蘇るのは寸分狂わず今がベストというタイミングで運ばれる牛肉の色と香りだ。今の時代、ガストロノミーは五感を刺激するものでなくてはいけないことを教えてくれる。
KABCO

これが門埼熟成牛。これ以上も以下もない極上のメインディッシュだ。

料理に合わせてワインがペアリングでサービスされる。ソムリエの資格を持つ加田シェフとサービスを担当する立澤夢氏のコンビは見ていて楽しい。自分たちの目線で選び抜いたワインは海山の幸にぴったりとはめ込まれる。
六本木

アランデュカスの薫陶を受けたふたりのコンビが新しいフレンチを創り出していく

2人はベージュアランデュカス東京の厨房で、小島景シェフのもとで多くの主要なポジションを任されてきた。現在はサービスを担当する立澤氏も当時の最終ポジションはヴィアンド担当。ミシュラン星付クラスのレストランでそこまでたどり着いた女性はそう多くはない。2人には仕込みも調理もサービスもできる、つまりマルチポジションを器用こなせる強みがある。

素材、加工、調理、サービス。当たり前の流れの中に日本の高品質な素材と料理人の技術が噛み合うとき、新しい日本のフランス料理が育っていく気がする。

<DATA>
KABCO (カブコ)
住所:東京都港区六本木3-1-25 六本木グランドプラザ3F
予約電話:03-6277-8229
営業時間:18:00~23:00(ラストオーダー 21:00)
コース:6000円、9800円、12800円(税込・サ10%別)
地図
六本木一丁目駅1出口から徒歩約3分、六本木駅5出口から徒歩約6分


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