プロがおすすめする都内フレンチの新店!

2016年末から2017年1月にかけて開店した都内のフレンチレストランのなかでも、これは!というお店をご紹介します。それぞれが特徴ある料理、インテリア、そしておもてなしのかたちがあります。場所で選ぶか、料理で選ぶか、ワインでいくかーー。お店選びのご参考にどうぞ。


モナトリエ(渋谷)

私のアトリエ、と書かれたこのレストランはあたかも自分で色をつけられるキャンバスのようだ。モナトリエは宮益坂を上り静かな一角から明るい光を煌めかせる。カウンター、ダイニング、プライベートラウンジがあり、誰とどんな状態で行くか、で居場所を決められるわくわく感がたまらない。特にプライベートラウンジはオーナーの遊び心が実に面白い。
渋谷

優しい照明がシンプルなインテリアを引き立てる

予算に応じて組み立ててくれるメニュー、ワインリストはオフィシャルには存在するものの、実際はソムリエのポケットの中。そこから出てくるワインはグラスでもボトルでも無尽蔵に、世界中からグラスを満たす。

舞台のダンスシーンのように踊りだすかのようなアミューズがやってくる。3つでも4つでもプレートに並べていく。まるでキャンバスに色をつけるように。小さな一口がシャンパーニュと溶け合う。この瞬間はとても危険だ。キリがなく記憶に残りいつもそれを求めてしまうかもしれないからだ。
渋谷

選ぶ楽しさとプレートに並べる面白さはモナトリエならではかも

カウンターの向こうにキッチンが見える。シェフは素材を手間をかけて美しく彩る技術に長けているようだ。繊細に仕上げるところは緻密に組み立て、ボリュームが必要な時は大胆に積み上げて食欲をあおる。

特筆すべきは島根県出雲地方でわずかに生産されている「かつべ牛」だ。その名の通り、勝部氏が手塩にかけて育てた黒毛和牛で、東京ではモナトリエだけで提供されると聞く。個人の名前をつけられる牛は宮崎の尾崎牛が有名だが、このかつべ牛も尾崎牛に勝るとも劣らない味わいだ。

繊細なサシに香り立つ赤身肉がじっくりとローストされ、比較的やさしく仕込まれたボルドレーズソースが味わいを引き上げる。さらにそこにメルロー主体の赤ワインが第二のソースとなり、ディナーはクライマックスを迎えるだろう。日本が誇る和牛の価値を生産者への敬意を込めてここで再認識したい。
島根県

島根県産かつべ牛はじっくりと赤ワインに合わせたい

ソムリエのワインを選ぶ切れ味は鋭いが、彼はそれをいつも隠している。ワインをそそぐときに、そのやさしさを垣間見る。それが僕たちをさらに心地良い世界に運ぶ。ワインと料理は一心同体。そこには生産者、料理人とソムリエ、そして大切な友人や家族がいる。モナトリエはいつもやさしく、そして心地良いガストロノミーな世界を作ってくれる貴重な一軒だ。

22時以降はカウンターでワインをアラカルトと共に酔わせてくれる。変化が途切れない渋谷でリセットする場所として貴重な一軒だ。

<DATA>
モナトリエ
東京都渋谷区渋谷1-10-12 宮城ビル2F
地図 渋谷駅より徒歩5分
電話:03-6427-4611
営業時間
17:30~24:00 (22:30 LO)
無休(年末年始を除く)
コースメニューは7300円~(税込サ10%別)
予算や内容に応じて対応



ルディック(浅草)

日本を訪れる外国人、そして日本人観光客までも大人気なのが、東京が誇る聖地、浅草ではなかろうか。仲見世通りはいつも人で溢れ、そのから伸びる路地裏も古くから続く比較的小ぶりな飲食店や土産屋、そして専門店が賑やかに軒を連ねる。ここ最近の変化をみると、浅草寺の裏手あたりから東方面へ人の流れが出来つつあり、いやゆる「吉原」方面も今や隠れた人気スポットになりつつある。時代は明らかに変わってきた。
浅草

2人ならシェフの手さばきが見えるカウンター席がおススメだ

そんな中、2016年12月に満を持して開店したルディック。浅草寺界隈の喧騒から少し離れた路地裏は何かいつもワクワクする。世界各国の料理がこんなところに!という小さな発見に心ときめかせ、たどり着いて開けたドアの先には長いウッディなカウンターが僕たちを迎えてくれる。オープン過ぎる位のキッチンからは野菜のフォンの香りが漂い、その瞬間から食事はスタートだ。

コースは小技を利かせた小さな料理が運ばれる。フォアグラの「最中」は楽しいアミューズ。マカロンとも違う食感の中にはあるフォアグラの味わいに日本とフランスが歩み寄る。

カリッとフリットされた車海老はアーモンドを纏い、ナッツのソースを従える。何気ない逸品だが、白ワインと合わせるとまさにキュイジーヌ・ド・ラメール。小さな海がカウンターにやってきた。
浅草

何気ない一皿だが、食欲をぐっと引き上げる

エゾ鹿のローストは繊細なシカ肉赤身の肉質ひとつひとつに火が入り、色合いも香りも鮮やかな自然の恵み。定番の果実系ソースも主張すぎず、北の大地から届く恵みに対してほどよく旨みを引き立てる。
浅草

蝦夷鹿の赤身に自然の恵みを感じる。丁寧な火入れも申し分なし。

フランスや都内の人気店で腕を磨いた大塚シェフ。準備に1年をかけた成果物がこの小さな空間だ。気軽な雰囲気だが、料理に手抜きはない。楽しいアイデアもちりばめられ、飽きが来ないように日々考えていると話す。カウンターの手触り感が心地よく、その居心地のよさに時の流れをいつしか忘れてしまう。奥には4人掛け×2のダイニングテーブルがあり、総席数は14席程度であろうかシェフ一人でこなすには適度なスペースかもしれない。開店後は程よく混雑しているようで予約は必須のようだ。
カレー

〆にカレーが出るのはうれしい反則技か

かつて下町と呼ばれるところはごく少数のフレンチしかなかったが、今はルディックのようなハイクオリティな料理店が増えてきた気がする。SNSで随時情報が更新されており、今やホームページやブログにとって代わるツールになっている。

<DATA>
ルディック
東京都台東区浅草3-18-6-102
地図
電話:03-5849-4169
営業時間
ランチ    12:00~15:00(L.O.14:00)金土日ランチ営業
ディナー 18:00~23:00(アラカルトL.O.22:00 コースL.O.21:00)
水休
コースメニュー:5000円~(税込)



マ・プール(東大前)

黄色いエクステリアがとても印象的だ。昼は光を吸い込み、夜は灯りを放つそのエントランス。その中はほとんどフランスだ。いや、フランスの田舎といったほうがいいだろう。フランス料理は地方料理の集合体とも言われるが、マ・プールでは市岡シェフが研鑽を積んだスイスに隣接するジュラ地方の郷土料理が楽しめる。
マプール

黄色い外観が目印だ

ジュラ地方はアルボワにあるミシュラン二つ星、ジャン・ポール・ジュネにて研鑽を積み、影響を受けた料理は市岡シェフのスペシャリテ、「伊達鶏とモリーユ茸のヴァンジョーヌソース」で表現される。ヴァンジョーヌソースとはジュラ地方で精算される超熟タイプのワインをベースに作るソースで鶏肉のソースとしてはたまらなく相性のいいものとなる。
東大前

このスペシャリテはぜひいただきたい

マ・プールのドアを押すとその香りから、ガイドブックや口コミサイトを読まずともこの小さなレストランが「おいしい」ということに気付くだろう。

フォアグラのプティングは日本でいうとさしずめ、茶碗蒸しだろうか。奇をてらうこともなく、単純に美味しさのど真ん中に誰もがホームランを打てるボールを投げ込まれたがしてします。小さなココットでなく、大きなボウルでいただきたいなあ、と思いつつ次の料理を待つ。
マプール

フォアグラのプディングはおかわりしたくなるとっておきのスタート

ワインリストで仰々しくワインを選ぶのではなく、ボードにかかれたマダムセレクションの中から料理に合うものをグラスでいただきたい。料理との相性からフランスの話までマダムとのやりとりもご馳走の一つになるだろう。

温前菜としてサービスされる伊達鶏とモリーユ茸のヴァンジョーヌソース。この料理にこそフランスが詰まっている気がする。とにかくフランス人はプーレロティが大好きだ。デュカスもガ二エールもボキューズもおばあちゃんのプーレロティが大好きだったのだ。もちろん決め手はソースにある。優しく、深く、飽きのこないソースは伊達鶏の優しい食感に溶け込み、ジュラのスパークリングや白ワインを従えてガストロノミーの世界を彩る。
マプール

美しく彩られるカリフラワーのムースとオマール海老のコンソメジュレのガトー仕立て

多くの料理を味わった。どれも秀逸で、そして小さな驚きがある。しかし、僕はフォアグラのプティングのラージサイズ、そして伊達鶏とモリーユ茸のヴァンジョーヌソースのダブルサイズ、そしてチーズがあれば最高のディナーになるだろう。

僕はこの黄色い小さなレストランが大好きになってしまった。

<DATA>
マ・プール
東京都文京区西方2-19-17
東京メトロ南北線「東大前」駅より徒歩5分
東京メトロ千代田線「根津」駅より徒歩10分
地図
電話:03-3868-2518
営業時間
火~金 17:30 - 23:00(L.O. 21:30)
土 17:30 - 22:00(L.O. 20:30)
日 12:00 - 15:00(L.O. 13:30)、17:30 - 22:00(L.O. 20:30)
月休
コース料理:3900円、5200円、7200円(税別)
テーブルチャージ500円


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