フレンチ/東京のレストラン

【移転】レストラン マサ ウエキ(銀座)(2ページ目)

フレンチの鬼才、植木将仁が復活した。研ぎ澄まされた感性で、「野菜は野菜以上に、魚は魚以上に」と素材を「料理」に変えるコンセプトを貫く。日本で進化するフランス料理の「今」がここにある。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

冬山の恵に抱かれて 最初の料理は白子のガレットにエビ芋、パンケーキなどを立体的に組み合わせた一品。ファーストサプライズは例えると縦の変化球か。それも鋭く落ちる全盛時代の野茂投手のフォークボールのように。白子の甘みがすべての素材を包み込み、消える魔球のように身体の中に溶けていく。宴は始まったばかりなのに私たちは言葉を失った。
銀座

大海の香りが凝縮されたアミューズ

次は「甘美なる憂愁」。フォアグラとイチゴ、そしてカカオ風味のムースを重ねて車海老を忍ばせる。優しい料理に見えるかもしれないが、塩で全体の輪郭をしっかり〆て味わいをぼかすことがない。これは過去も含め、植木氏の料理すべてに言えることだ。
銀座

カカオ風味のムースとイチゴがフォアグラの旨味をぐぐっと引き出してくる


「豊潤。赤い塗り器は印象的だ。そこにサフランの香りのスープドポワソンに浮かぶアワビとワカメ。スープは豊かな大海を料理で表現し、同時にタイトルにあるように豊潤さを吹き込む。(この器は売ってくれるなら買いたいと思ったくらい私の感性を刺激した)
銀座

強く芳醇な味わい。器も料理の一部となる。

11品の料理一つひとつ書いていくと小説になってしまうような気がする。しかし、メインディッシュになると現実世界が見えてくる。「冬山の恵に抱かれて」。猪のローストだ。36時間火をかけて焼き上げた、いわゆる定温ロースト。まあ、調理法はともかく猪自体の味に驚く。「猪ってこんなに旨かったか??」と。聞くと天城のウリ坊のやや大きめのものだそうだが、豚肉よりも滋味深く、牛肉よりもワイルドな味わいだ。しかし、決め手はプロの塩加減だろう。塩一つで素材は大きく変わるのは言うまでもない。黒キャベツをフリットも食感が楽しく、早くも筍が春が近いことを予感させる。そうか、寒かった2013年の冬も暦上はそろそろ立春だ。
猪

シンプルだが記憶に残る一皿だ

ワインの値付けもガストロノミーレストランの中では値ごろ感があるものが多い。シャンパーニュもボトル1万円以下で用意されている。輸入元の偏りが見られるのが気にはなるが、これから顧客の志向に合わせて少しづつ変わっていくことだろう。
デザート

モダンティラミス2013 この他個性的なデザートが続く

とにかく料理は圧巻だ。アートとも言えるし、モダンでもある。和風とも言えるし、ガストロノミーそのものである。しかし、その底辺にあるのは世界無形遺産であるフランス料理の源流をしっかりと理解した植木氏ならではの「技術と感性」に他ならない。そしてそれは変化し、進化する。
植木将仁

素材を語るシェフの言葉は熱く、そして優しい。

「美しい言葉と美食」の渦に浸ることができる新しいレストランが静かに動き出した。

レストラン マサ ウエキ (Restaurant MASA UEKI)
東京都中央区銀座4-9-13 銀座4丁目タワー リュクスアベニュー銀座 5F
地図
電話:03-6264-1741
営業18:00~22:00
ディナーコース:16,000円/23,000円(サ10%別)
火休
席数10席
個室あり(4席)
完全禁煙

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