フィンランド/フィンランド基本情報

フィンランドの気候・四季と服装アドバイス(5ページ目)

フィンランドは、夏と冬の寒暖差や日照時間の差で見れば、日本よりも四季がはっきりとした国と言えます。夏でも涼しいの? 冬はどれくらい寒い? 極寒下の観光は可能? どんな衣服を持っていけば安心?……聞かぬことには想像もつかないであろう極北国の気候と服装について、現地暮らし目線でアドバイス。

こばやし あやな

執筆者:こばやし あやな

フィンランドガイド


フィンランドの冬の気候

フィンランドの冬

冬は湖上にできた天然のスケートリンクでホッケーやスケート、クロスカントリーなどを楽しむ人も多い。スキーウェアを外出時の日常着とする人も少なくない

日本人にとっては、来て体験してみないことには想像のしようがない北国フィンランドの長く厳しい冬。けれど滞在場所の気温と体感レベルが実際どの程度のものなのか正しいイメージを持って、万全の準備をしていけば、恐れることはありません!

ハロ現象

冷え込む日に昇る朝日の両側に注目。巨大な虹の環が見えるハロ現象に出会えるかも

特に、気温が低い日は大気がこの上なく澄み渡り、雪や樹氷やダイヤモンドダストがきらきらきらめいて、どこを切り取っても絵になります。また、誰もが憧れるオーロラだけでなく、太陽の周囲を虹が覆って見えるハロ現象など、極寒世界でしか出会えない自然現象もたくさんあるのが冬の魅力です。

まず月間平均気温を見てみると、ヘルシンキ(フィンランド南部)およびソダンキュラ(ラップランド)のここ数年の12月の平均気温はそれぞれ、マイナス5~1度/マイナス14~10度前後(ただし12月の気候は一番年によってばらつきがあり、次年度の予測が難しい)。同じく1月の平均気温は、それぞれマイナス5~3度/マイナス14~12度くらいで、そこまで12月と変わらず。気温が最も落ち込む2月には、マイナス9~5度/マイナス19~13度前後が目安となります。

氷の結晶

マイナス20度を切ると、窓ガラスには美しい氷の結晶が

ただこれらはあくまで朝夕や日ごとの差をひっくるめて出した平均値。実際は、1日の時間帯によってかなり寒暖差があるほか、たった一晩で一気に15度も冷え込んだり……といった極端な気温変化が起こりやすいのが冬の特徴。南部に位置するヘルシンキにも、12~2月のあいだにマイナス25~30度まで落ち込む寒波が何度か急襲しますし、北極圏ではマイナス20度台は決して珍しくなく、なんとマイナス40度を下回る日もあるほどです。こうした激しい気温変化は、こまめに天気予報をチェックしながら予測対応に努めるほかありません。

雪はどのくらい降るの?

雪の日の都市

雪には十分慣れているので、首都機能や交通機関が麻痺することはまずない

積雪量は、現地に来てみれば思った程ではなかった、という感想をもつ人が多いのではないかと思います。というのも、真冬のフィンランドに降るのは塵のような乾いたパウダースノーなので、たくさん降ったとしても日本の豪雪地帯ほど体積をもたず、軽くて積もりにくいからです。また、街なかでは24時間体制で除雪車が稼働しているので、通行道の多くは、雪にまみれることなく楽に歩くことができます。

ただしもちろん、時には急な雪嵐でものすごい積雪量を記録するときもありますし、いったん吹雪き始めると視界が遮られて危険な思いをすることがあるので、出歩く際に常に注意は必要です。ラップランドでの事前申込制ウィンターアクティビティも、気温が低かったり雪がひどい日はやむなく中止されることもありますので、ご容赦を。

湖上ウォーキング

湖上は冬のれっきとした交通要所。広い湖の場合、歩行者用やスケート用滑走路が整備される

それから、冬の湖畔を訪れることがあれば誰もが好奇心で試してみたくなるのが、凍った湖上ウォーキング。氷の厚さが20センチメートル以上になれば人が乗っても大丈夫と言われていますが、そのタイミングは年によりけり。特に冬の始め・終わりごろは、他にも人がいるかどうかを確かめてから挑戦するのが無難です。

 

極寒世界の体感レベルはどんな感じ?

冬の太陽

どんなに凍てつく日でも、青空に太陽がのぞく日はほのかな暖かさを感じられる

マイナス20度だ30度だといっても、もちろん体感具合は人によりますし、風の有無でも大きく左右されますが、日本の冬のような、いわゆる「ぶるぶるくる寒さ」を感知するのは、意外にもマイナス10度を切るまでの話。気温がマイナス二桁に突入すると、そこからはむしろ、痺れや痛覚、局部的な凍結との戦いが主になってきます。

冬の移動

寒い外の移動は、静かにいそいそと

例えばマイナス15度を切ると、外に出た瞬間鼻孔やまつ毛が凍り始め、さらに温度が下がれば、吐く息のかかった髪なども真っ白に。マイナス20度以下の冷気は、深い呼吸で肺に入れすぎるとむせかえってしまうこともあるので、呼吸はマフラー越しに浅く行うのがポイント。マイナス30度以下になる日は、あまり外出自体をおすすめしません。

また、慣れない低温の外気に長時間身をさらしていると、敏感な皮膚が痺れてうずいてくるほか、頭痛が起きたり、体力の消耗が激しくなるもの。屋外観光ばかりに没頭せず、こまめに室内にはいって休息をとり、身体を温めることが重要です。

知っておきたいのは、カメラ撮影などのために、寒い外気にさらし続けて凍傷を起こしかけた手足の指を、室内に入った途端に熱湯をかけて温めようとするのはNGであること!急激な温度変化で真っ赤に腫れ上がってしまい、返って長く痛みを伴います。室内に入った直後の、冷えきった指の解凍ケアは、まずは冷水にさらすのでも十分温かく感じるはず。そこから徐々に水温を上げて、ゆっくりと通常の感覚をとり戻していくようにしましょう。

フィンランドの冬の服装チェック

冬の装い

寒い冬と言えども、アウターが防寒性に優れたものであれば、さらに着込む必要はない。また足場が悪いうえ、靴底から地表の冷気が伝わりやすいので、靴底が頑丈で保温性のあるウィンターシューズがおすすめ


厳寒期と言えども、中南部の都市の街歩き程度であれば、そこまで気負った重装備をする必要はありません。大事なのは、羽毛のしっかり詰まったダウンジャケットやスキージャケット、お尻まで隠れるぶ厚めのウールコートなど、一番上に防寒性の高い頼れるアウターを羽織ること。アウターがしっかりしていれば、あとは内にたくさん着込んでも着込まなくても、実は体感的にはほとんど一緒というもの。下半身は、保温性のあるレギンスやタイツの上から綿のズボンやジーンズを履けば十分。現地の人はさらに、外の移動のときだけ防風性の高いナイロン生地のスポーツウェアズボンを履くことも多いです。

繰り返しになりますが、冬であっても「脱ぎ着重視の重ね着」コーディネートが大事。アウター以外にあまり着こみ過ぎると、室内で不快な思いをすることになるので注意です。また、金属製のアクセサリーは、キンキンに冷えて肌に不快感をもたらすので、冬の間はおすすめしません。

真冬の服装

極寒のラップランドでも、適切なアウターや小物を選べばへっちゃら!

そして大事なのが、露出部分を極力減らすための小物使い。特に寒さで痺れやすく、しっかり守りたい部位は、耳、首筋、指先、足の裏です。耳は暖かいニット帽や耳あてでしっかりガードし、首筋はマフラーをグルグル巻きにして、ついでに口元も保温できればベター。手袋は、ニットやレザーの五本指手袋の上からさらにミトンで覆うなど、二重にすると効果的です。足元は、靴底や靴下が薄いと、徐々に地面の冷気を吸って全身を冷やしかねないので、特に保温を意識して。靴下を二枚重ねしたり、内側がボアで覆われたブーツやウィンターシューズを履くのがおすすめ。路面は雪で滑りやすくなっているので、その意味でも防滑性に優れたウィンターシューズは重宝されます。

ラップランドでオーロラ観測をする場合などは、さらに防寒対策を強化する必要があります。アウターにはスキーウェアや登山服の着用が理想的。さらに帽子や手袋、靴下を何重にも重ねたり、眼の周りだけ空いた顔マスクを着用したりと、極力露出部を減らす努力をしましょう。カイロも短時間ながら効果を発揮しますが、実はフィンランド自体にはなぜかカイロというアイテムは普及していません……。

最後に、厳寒下では、カメラや携帯電話などの電子機器が影響を受けて、動作が鈍くなったり、バッテリーをあっという間に消耗したり、ひどい時には故障したり、といった異常を起こすケースも少なくありません。大事なものであれば、人体だけでなく機器の防寒対策もしっかりと。カメラ機器は、寒い屋外から室内に入る前に大きめのビニール袋に入れて密封しておくと、結露対策の効果があります。

防「暗」対策も忘れずに!

リフレクター

デザインも豊富なリフレクターは、冬のおみやげにもぴったり!

冬のお出かけは、日照時間が短いために暗い中での移動も当たり前。暗い夜道で、歩行者として対向車に存在を示すためには、かばんやコートにリフレクター(反射板グッズ)をつけておくと大変効果的です。

実際、リフレクターは冬のフィンランドのマストアイテムとして誰もが身につけて歩くのが暗黙のルールですし、ムーミンやマリメッコ柄などをあしらった、凝ったデザインのものもたくさん出回っているので、お土産として買って旅行中につけ始めるのも良いかもしれませんね。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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