旧都統治のために築かれたフィンランド最古の城、トゥルク城

トゥルク城外観

アウラ川河口に佇むトゥルク城は、何度も増築や修復が繰り返されたので、さまざまな建材や様式がミックスされている

1812年のヘルシンキ遷都まで長らく首都であった、フィンランド南西部の街トゥルクの港のそばに今も佇む、なんとも素朴な表情をした古城トゥルク城(Turun linna)。

城内

城の中庭。よく見ると窓枠のデコレーションが手描きされているのもおもしろい

城郭をぐるり一周歩いてみると、直線的で古びた石壁がむき出しになっている部分もあれば、白く塗り込められていてなめらかなカーブを描く塔もあって……と、角度によってまったく別のお城のように雰囲気が異なって見えます。また城内も、異なる年代に修復や増築を重ね、パッチワークのようになったユニークな姿が見受けられます。

棟梁たちは当初、フィンランドの岩盤から大量に採取できる花崗岩をメインの建材として築城開始しましたが、やがて西方から伝わったレンガに切り替えられていき、一部にはスウェーデン最大の島、ゴットランド島から持ち込まれた石灰石も用いられました。

当初の城は簡素な回廊状でしたが、徐々にディテールや機能が加えられて複雑になっていき、16世紀後半までにはおよそ現在と同じ構造となっていました。しかし、第二次世界大戦では爆撃によって城全体が大きく破壊されてしまい、修復事業が終わって戦前の姿が再びこの地に蘇ったのは、1987年のことでした。

複雑な歴史のなかで、幾度も役目を変えていった城

外郭

ルネッサンス期までに完成していた城の外郭

1200年代の南フィンランドは、西方から徐々に隣国スウェーデン王国の支配下に収められてゆきます。そしてスウェーデン領が拡張されるたびに、東の境界には新たな軍事要塞が建設されていくのでした。

1280年ごろに建設が始まったトゥルク城は、当初そのような陣営としての役目よりはむしろ、税の徴収・管理など、スウェーデン君主によるフィンランド統治拠点としての色が強かったといいます。けれどその後は、情勢によって城の役割もどんどんと変化していきました。例えば14世紀にロシア側がトゥルクまで攻め込んできた時にはその重要な防衛拠点になり、16世紀には、スウェーデン王ヨハン3世のきらびやか居城としての役目も果たしています。また、19世紀にロシアがフィンランドを制圧してからしばらくは、ロシア軍の駐屯地として占拠されていた時期もありました。

現在は、ミュージアムとして内部のようすや歴史を公開

教会

城の一角に収まるやや無骨な教会では、独特の信仰のあり方を目の当たりにする

現在のトゥルク城は、内部が大規模なミュージアムとして一般公開されています。5階建てで、大小さまざまな部屋の収まる城の中はさながら迷路のようですが、順路にしたがって進んでいけば、その大部分をひと続きに鑑賞して再び入口に戻ってくることができます。

ルート内では、洞窟のような暗がりの中にひっそりと存在する教会からきらびやかな王室まで、複雑な歴史をくぐり抜けてきた城ならではのさまざまな表情が見られる間が続きます。また、歴史や時代ごとの文化を詳しく伝える展示室もあり、すべてを見てまわれば知識と体験の両方から往時の様子をリアルに思い描けるのではないでしょうか。

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外観

港側から仰ぎ見るトゥルク城

Turun linna(トゥルン・リンナ)
住所:Linnankatu 80, 20100 Turku
TEL:+358 2 262 0300
アクセス:マーケット広場から市バス1番で10分
「Turunlinna」下車すぐ
開館時間:火~日曜10:00~18:00
休館日:月曜
入場料:8ユーロ(学生4.5ユーロ)

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