フィンランド/フィンランド沿岸地域と群島

フィンランド3大古城の歴史と観光案内(3ページ目)

「フィンランド3大古城」に数えられるのは、南西部の街トゥルクのアウラ川河口にそびえ立つトゥルク城、中南部の街ハメーンリンナの街外れに佇むハメ城、そして東部カレリア地方のサヴォンリンナの水上に浮かぶオラヴィ城。いずれも、フィンランドがスウェーデンとロシアとの攻防戦の狭間で揺れていた中世の時代に、軍事や統治の拠点として建てられました。それぞれの城のロマンあふれるヒストリーと、現在の姿を紹介します。

こばやし あやな

執筆者:こばやし あやな

フィンランドガイド

大人気ゲームのモデル地にもなった、サヴォンリンナのオラヴィ城

オラヴィ城

円筒状の塔が並んだ城内は劇場に作り変えられており、毎年7月に世界的に有名なオペラ祭が開催される

ヘルシンキから電車で4時間あまり。ロシア国境にも遠くないフィンランド南東部のリゾート都市サヴォンリンナ(Savonlinna)は、1475年に2つの運河の合流域に浮かぶ小さな島に築かれたオラヴィ城(Olavinlinna)があることで知られています。とりわけ日本では、この城が大人気TVゲーム『ドラゴンクエスト』の初期作に出てくる竜王の城のモデルになったというエピソードから、ゲーマーのあいだでよく知られているというのもおもしろい話ですね。

通路

外からの光が遮断された内部の通路

オラヴィ城もハメ城などと同じように、ロシア領侵攻に躍起になるスウェーデンが、東へ東へと領土を押し広げていく過程で自領の境界を示す軍事要塞として築城したものです。建設途中に区画がロシア領にまではみ出てしまったことから、途中ロシア人たちの大きな妨害に遭ったという逸話も残っています。

主な建築資材は近隣から採取された石で、石造りの城砦としてはオラヴィ城が世界最北と言われています。円塔は城郭の完成後に建てられたもので、外観はやや無骨な城ですが、内部には立派なパーティールームや王室などもつくられました。 城がとりわけ危機に瀕したのは、スウェーデンとロシア間の戦争が激化した1700年代。たびたびロシアによる城の占拠とスウェーデンの奪回が繰り返され、太い塔が破壊される事態も起こりました。

20世紀に入って、国内きってのオペラ歌手アイノ・アクテが、オラヴィ城でのオペラの上演を提唱し自ら実現させたことで、軍事要塞としての城のイメージは突如一新されます。彼女の功労により、その後も城内でのオペラ公演は不安定な情勢の中でも幾度か開催され、1967年からは毎年恒例のオペラ・フェスティバルとなって、世界中から観客を集める夏のフィンランドの一大イベントに発展していくのでした。 

今や夏の風物詩、白夜の古城でのオペラ・フェスティバル

オペラフェスティバル

ひんやりとした石造りのお城のなかで鑑賞するオペラは雰囲気も満点!

オラヴィ城は年間を通して内部見学が可能になっていますが、とりわけ世界中から多くの人が詰めかけるのが、夏のオペラ・フェスティバルシーズン。沈まぬ太陽の輝く7月上旬から8月上旬にかけての約1ヶ月間、城内に設置された石造りの舞台で毎晩オペラ鑑賞ができるという、雰囲気満点の定例イベントです。

休憩時間

幕間の休憩時間には、おしゃれなドリンクを片手に沈まない夜の太陽に輝く美しい風景を眺めるのも醍醐味

毎年複数の演目が用意され、日替わりで毎夜1作品ずつ上演されます。オーケストラは国内各地のプロオーケストラの団員が集められて編成された特別楽団で、ソリストや音楽監督も毎年豪華。上演演目は例年かなり前もってウェブサイト上で発表され、クラシカルな王道作品が中心ですが、国内作曲家の作品が初演されることもあります。

また、オラヴィ城ならでのオペラ鑑賞の醍醐味は、開演前や幕間の休憩時間に、城壁の小窓や展望デッキから白夜の湖畔のしっとりとした水景が眺められること。ちょっとお洒落な装いで入城時から気分を高めて、本格オペラの合間にはシャンパンやワインを片手に城塞からの絶景鑑賞……なんてロマンチックでムード満点なひとときでしょう!
 
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入口

水に浮かぶ古城へは、やはりぜひ夏のオペラフェスティバルのシーズンに!

Olavinlinna(オラヴィンリンナ)
住所:Olavinlinna, 57130 Savonlinna
TEL:+358 1 5531 164     
開館時間:月~金曜10:00~16:00、土・日曜11:00~16:00
(夏季は毎日11:00~18:00、オペラ・フェスティバルの開催期間は17:30以降は観客のみ入場可能)
入場料:8ユーロ(学生6ユーロ、17歳以下4ユーロ)

※ サヴォンリンナ・オペラ・フェスティバルの公演案内やチケット予約のできる公式サイトはこちら

※上記データは記事公開時点のものです。

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