東西文化の交流地「マラッカとジョージタウン、マラッカ海峡の古都群」
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ジョージタウンのセント・ジョージ教会。隣にある天蓋は、1786年にイギリス人船長フランシス・ライトがこの地に上陸したことを記念したもの。この年にペナン島がイギリスに割譲され、ジョージタウンが建設された
今回は、海のシルクロードの要衝として、あるいは大航海時代の香辛料貿易の拠点として発展したマレーシアの世界遺産「マラッカとジョージタウン、マラッカ海峡の古都群」を紹介する。なお、マラッカとジョージタウンの名所はそれぞれp3、p4で解説する。
料理でわかるマラッカ&ジョージタウンの多様性

マラッカの象徴、オランダ広場。右がマラッカキリスト教会、噴水はヴィクトリア女王噴水、左隣にタン・ベン・スィ時計台がある
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親子代々70年以上も屋台を続けているというジョージタウンのワンタンミー屋台
たとえば麺。ワンタンミー(雲呑麺)は屋台でもよく見かけるが、これがおもしろい。麺は小麦粉に卵を加えたもちもち感がたまらない中華麺。ところがベースの味付けはブラチャンと呼ばれる魚醤で、干しエビなども混じっている。この辺りはタイ料理に似る。そして全体にはほのかなスパイスの香り。インド料理の影響も見て取れる。
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飲茶屋台。甘辛くて酸っぱいソースをかけていただくのが独特
屋台を歩いていても、中華系のシュウマイ屋台、インド系のサモサ屋台、マレー系のサテ屋台が並んでいたりする。しかもそれぞれがおいしい! これほど食が多彩な街は他に見たことがない。
この地域の料理を大別すれば、中華、インド、マレー、そして中華とマレーが合わさったニョニャ(プラナカン)の4種に分けられる。もっともワンタンミーのように中華といっても中国のものとは随分違うものもあり、単純に分けられるものでもない。この重層性がこの地域最大の特徴なのだろう。
ジョージタウンの町歩きと多宗教混合社会
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ジョージタウンのマハ・マリアマン寺院。ドラヴィダ式のヒンドゥー寺院で、ゴープラムに刻まれた38の神像が美しい。内部もシヴァ・リンガやヨーニ、神々の像が祀られている
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中華系の参拝者が絶えないクアン・イン(観音寺)。すぐ隣にはヒンドゥー教の半人半象の神ガネーシャを祀る祠があったりする
通りの北端、海岸近くに見える白亜の建物がセント・ジョージ教会で、近くには聖母被昇天大聖堂もある。イギリスがペナン島を手に入れて最初に開発したのがこの辺りで、シティホールやタウンホール、高等裁判所など、植民地時代に建てられた豪壮な建物が多い。
教会から南に100m少々歩くと右手に現れるのがクアン・イン(観音寺)だ。巨大な線香を供え、一心不乱に祈りを捧げる中華系の人々の姿を見かけるが、ここの観音菩薩はこうした願いを叶えてくれるとてもありがたい神様なのだとか。
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カピタン・クリン・モスクとミナレット
さらに100m行くと、タマネギ型ドームのカピタン・クリン・モスクが現れる。隣接する塔をミナレットといい、1日5回、アザーンと呼ばれる祈りの呼びかけが大音量で流される。この辺りの女性は髪をヒジャブと呼ばれるスカーフで隠しており、白いイスラム服カンドーラに白い帽子ソンコをかぶる男性も多い。
カノン通りに名を変えるが、道なりにさらに南に歩を進めるとヤップ・コンシー(叶公司)が現れる。中華系の氏族を祀った霊廟で、彫刻が見事。左手、少し入ったところにあるクー・コンシー(邸公司)はさらに豪華で、精緻な透かし彫りは現代の技術をもってしてもマネできないとさえいわれている。
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精緻な彫刻に覆われたヤップ・コンシー(叶公司)。隣はコロニアル式のショップハウス
マラッカも同様だ。たとえばツカン・エマス通りを100mも歩けば、仏教寺院であるシャン・リン・シー(香林寺)、仏教・道教・儒教混合のチェン・フー・テン(青雲亭)、イスラム教のカンポン・クリン・モスク、ヒンドゥー教のスリ・ポヤタ・ヴィナヤガ・ムーティ寺院が次々と現れる。
これがジョージタウンであり、マラッカなのだ。