飲料業界で続々登場するトクホ製品
飲料業界ではトクホ製品の投入が相次いでいる
11月13日には、サントリーがペプシコーラのトクホ版「ペプシスペシャル」を発売。
また、20日にはアサヒ飲料が炭酸飲料のトクホ「アサヒ ファイバー7500」の発売を開始する予定です。
「ヘルシア」でトクホ市場を切り開いた花王も、来春には新たにトクホのコーヒー飲料の発売を発表するなど、トクホ市場がヒートアップしています。
トクホは1991年に制度化されて21年の月日が経過し、今年の8月には登録品目が1000点を超えるなど、私達の生活には馴染みの深いものになってきています。
ただ、順調に拡大を続けてきたかに思えるトクホ市場ですが、2007年の6798億円をピークに曲がり角に差し掛かります。
2008年のリーマンショックを契機に景気が急速に冷え込むと、消費者の節約志向から割高なトクホ製品は敬遠され、市場は急収縮したのです。
製品が売れなければ、当然トクホの申請も下火になってきます。
ところが、このトレンドを大きく変えたのが、キリンビバレッジの「メッツコーラ」。
「メッツコーラ」は、今年の4月に発売されると、爆発的なヒットを記録します。
当初の目標であった100万ケースを発売後1週間で達成すると、その後も売れ続け、これまで「コカ・コーラ」と「ペプシコーラ」以外成し得なかった年間1億本という高い壁をも軽々と超えて、年間700万ケース(本数換算で1億6,800万本)を目指して今なお快進撃を続けているのです。
なぜ、今トクホなのか?
サントリーやキリン、アサヒ、花王など、なぜ今飲料メーカーがこぞってトクホ製品を市場に投入してくるのでしょうか?その背景にはやはり飲料業界の激しい競争が挙げられるでしょう。飲料業界においては“センミツ”と呼ばれるように、たとえ1000品目が市場に投入されても店舗の商品棚に長い間生き残ることができる製品はわずか3品という厳しい過当競争が繰り広げられています。
飲料メーカー各社は生き残りを賭けてあの手この手で新たな製品の開発に取り組みますが、もはや味などでは消費者の心を長い間食い止めることは難しくなってきています。
そこで、注目されているのがトクホというわけです。
2008年にメタボ検診が義務化されて以降、30代、40代の男性を中心に健康志向が非常に高まってきました。
その健康志向の高まりは、カロリーオフのアルコール飲料や、ゼロカロリーの清涼飲料が人気を博していることからも読み取れます。
トクホ製品は、カロリーを気にしながら飲む行為から一歩進んで、飲みながら健康状態を高めていくという健康志向の消費者にはうってつけの商品なのです。
誰しも楽をしながら、そしておいしいものを飲みながら、健康を維持したいという願望を持っています。そこで、同じものを飲むなら、トクホを選ぶというのは当然の結果といっても過言ではないでしょう。
トクホ製品で成功する秘訣とは?
飲料各社がこぞって投入するトクホ製品ですが、もちろんすべてが成功するわけではありません。やはり、売れる商品もあれば、売れない商品もあるのです。
それでは、どうすればトクホで成功を収めることができるのでしょうか?
「メッツコーラ」の成功事例からその秘訣を浮き彫りにすれば、まずは意外なものにトクホを組み合わせるというプロダクト戦略が考えられるでしょう。
これまで、「コーラは体によくない」とか「コーラは不健康」というイメージが一般的でしたが、コーラにトクホを組み合わせることにより「コーラを飲みながら健康になる」という、これまでの常識を覆すインパクトを与えれば、多くの消費者の興味を喚起することができます。
また、プライス戦略も成功を収めるためには重要な鍵を握ります。
いくら健康にいいといっても、まだまだ日本は不況の真っ只中にあり、生活で使えるお金はどんどん減っています。
第一次トクホブームの終焉が、その高い価格設定にあったことを考えれば、“低価格”というキーワードは無視することはできないでしょう。
実際に「メッツコーラ」は、480mlで150円と「コカ・コーラ」と比べて税抜きの定価で10円ほどの違いしかありません。
わずか10円の違いであれば、健康にいいものを選ぶ人も多いのではないでしょうか。
これまで選択の基準が「おいしい」という感性志向の業界に「健康にいい」という機能志向を取り入れてブルーオーシャンを切り開いてきたトクホ製品ですが、これからは多くの企業が新たなトクホ製品を投入してレッドオーシャン化が進んでいくことは確実です。
今後も“センミツ”の厳しい世界で生き残っていくためには、トクホだけでは差別化は益々難しくなることを考えれば、飲料各社には引き続き新たな切り口が求められることになりそうです。