ストレス/人間関係・人付き合いのストレス

パーソナルスペースとは…近づかれると不快な距離は何センチ?

【公認心理師が解説】人は無意識のうちに他人との間に距離をとり、「パーソナルスペース」を保とうとします。他人に必要以上に近づかれると、不快に感じてしまうものです。親しい間柄にだけ許される距離、親しくない人に入られると不快に感じる距離について解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

パーソナルスペースとは? 親しくない人が近づくと不快に感じる距離って?

パーソナルスペースとは…近づかれると不快な距離は何センチ?

親しくない人と語り合うとき、十分なパーソナル・スペースをとりながら会話できていますか?



空いた電車内では隣の人と距離を空けて座る方が多いですし、親しくない人と話す際には、対面ではなく斜め前の位置に座る方も多いと思います。

このように、人は無意識のうちに他人との間に距離をとって、快適な空間を保とうしています。こうした個人的な空間のことを「パーソナルスペース」と呼びます。親しい相手とはその空間を狭くとることができますが、親しくない人との間では、十分な空間を確保できないと不快感を覚えてしまいます。

アメリカの文化人類学者であるエドワート・ホールは、パーソナルスペースを4つのゾーンに大別し、それをさらに近接相と遠方相という2つの相に分類しました。そのなかで、親しい者同士に許される空間についてご紹介しましょう。

密接距離---ごく親しい人に許される空間
近接相(0~15センチ)
抱きしめられる距離(最も親しい人だけに許される)
遠方相(15~45センチ)
すぐに相手に触れられる距離(ささやきあえる)

個体距離---相手の表情が読み取れる空間
近接相(45~75センチ)
相手を捕まえられる距離(とても親しくなければ、違和感をおぼえる)
遠方相(75~120センチ)
両方が手を伸ばせば指先が触れあう距離(個人的な話をするとき)

上記の空間のなかに親しくない人が入ると、不快感をおぼえることが多くなります(ただし、これらのパーソナルスペースには個人差があります)。
 

95%がストレスを感じている? 通勤通学電車でのイライラの原因

満員電車ではパーソナルスペースが確保できないため、意識を他のことに向けている

満員電車ではパーソナルスペースが確保できないため、意識を他のことに向けている



ネットリサーチのマクロミル社によると、95%の人が通勤通学電車の中でストレスを感じているそうです(2016年)。

ストレスの原因は「満員電車・混雑」46%、「乗降時に出入り口等から動かない乗客」44%、「他の乗客のにおい」(汗臭さ・香水など)43%、「ヘッドホンからの音漏れ」37%、「電車の遅延」が37%という順位でした。上位4つまでは、十分なパーソナルスペースがとれないために感じているストレスであることがわかります。
 
不愉快なことに意識を向ければ向けるほど、イライラは募ってしまうものですが、スマホを見る、音楽を聴く、考え事をする、外の景色を眺めるというように、意識を他のものに向ければ、ストレスを和らげることができます。
 

自然に距離をおいてしまう夫婦は危機なのか?

親しい間柄でも、パーソナルスペースに入られると不愉快になることも 

親しい間柄でも、パーソナルスペースに入られると不愉快になることも 


パーソナルスペースの変化は、親しい人とのちょうどいい距離を確かめる目安にもなります。

新婚時代には、パートナーとソファに横並びでくっついて座っていられたのに、いつのまにか端と端に座るようになる。このように、年月とともにパーソナルスペースが広くなっていくのは、自然なことです。だからといって、それが夫婦の危機を意味するわけでもありません。その距離感がお互いにとって心地いいなら、無理して距離を近づける必要もないでしょう。

親子についても同様です。幼い子は親とぴったりくっついて過ごすことを好みますが、思春期が近づくと、隣に座ることすら嫌がるものです。これは子どもの自立の証であり、親子の危機を意味するわけではありません。

お互いに居心地のよい距離感を大切にしながら、ストレスなく暮らしていくためには、パーソナルスペースを尊重していくことが大切です。これは長い付き合いを円滑に続けていくための、生活の知恵でもあります。お互いのパーソナルスペースを大切にしながら、上手に長いお付き合いを続けていきましょう。

参考文献:『かくれた次元』エドワート・ホール/日高敏隆 佐藤信行訳(みすず書房 1970)

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