回答
不動産の仲介を仕事にしていますと、時々ある話です。
せっかく納得した金額で購入できると思い、手間や時間もかけて準備をしたのに、契約日当日にこんな話になるなんて・・
質問者にしてみれば、とっても気分の悪い話ですね。。
民法では、売買契約は特に書面を交わす必要も、物件を引き渡す必要も無く、金額の確定と売り手、買い手の意思の合致が契約の成立となります。
しかし、不動産のような高額で、しかも一定の準備行為を要する契約では、民法の規定をそのまま当てはめることはできません。
不動産取引の慣習では当事者間で買い付け証明書や売り渡し承諾書を取り交わした時点では、未だ細部について未調整な部分が多く、当事者双方の意思が確定しているとは言いがたく、売買契約は、成立していないとみなされます。(東京地判昭和63・2・29、大阪高判平成2・4・26)
結局、不動産売買においては正式な契約書面並びに物件の調査書類(重要事項の説明書など)が交わされ、相当額の手付金等の授受があるなど、客観的な行為があった時点で契約の成立を主張するべきと考えられていますので、質問者の内容から、この場合は売主の不法行為として責めることはできないと思われます。
したがって、購入を予定し、現地を往復した費用や諸経費も 、不動産を購入するにための予備的に必要なものと考えられますので、現時点での損害賠償の請求も認められないと思われます。
今回は、売主が契約直前に条件の変更をしてきた事例でしたが、買主が同じように契約直前に条件変更を申し出るというケースもあります。
もちろん、これもペナルティなしで認められますし、その新たな条件を売主・買主双方が了承すればいいわけです。
また了承できなければ契約決裂となるわけです。
極端な場合は、契約直前に「売るのを止めます」とか「買うのを止めます」なんてこともあります。
しかし、それでも契約をしていないうちは、相手方を責めて損害賠償請求などを求めることもできません。
でも、いくら法的に問題がないとはいえ、こういうことになれば、相手方はとっても気分の悪い思いをすることは否めません。
購入を決断する場合には、後で翻さないようによく考えて買付証明を提出するようにし、売主も条件を変更する場合には誠意をもって謝罪し、解決するように努めましょうね。
条文参照 (RONの六法全書On Line)
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