進化の軌跡
全戸角部屋の利点もうまくいかされている。バルコニーを設け、1LDKの間取りではキッチンか浴室のいずれかに窓を付けた。大規模マンションのコンパクトタイプではなかなかこうはいかないだろう。居室はできる限り整った形に。キッチンは食洗機と背面棚を標準で装備。シューズインクローゼットも設けるなど、顧客ニーズをうまく反映した空間である。立地特性を考慮し、構造から細かな収納まで一貫したノウハウが感じ取れる。「パークリュクス」シリーズはシングル市場をターゲットに4年前に立ち上げたまだ若いブランド。「竣工するまで決断しない、青田売りが困難な顧客層」といわれるシングル女性に、着実に受け入れらてきた印象を持った。秘訣はどこにあるのだろう。
「たしかに実物を見てからという方もいらっしゃいます」と一原さんは前置きした上で、「とはいえ、好立地は完成を待っている間に売れてしまう。その感覚は女性も例外ではありません」。「それにこの2、3年の間にもシングル女性のマンションの見方はずいぶん変化してきました」ともいう。
顧客動向の変化と市場への影響
「以前は、親の反対を理由に購入を見送るシングル女性が結構いらっしゃいましたが、最近はほとんど聞かなくなりましたね。それに、モデルルーム見学も、男女問わず友達と一緒に来られるケースが増えました」(同氏)。友達の購入を機に自分も考えはじめる、すでに買った先輩に同行を求める、いずれも「パークリュクス」立ち上げ時にはなかった傾向。シングル女性のマンション購入が市場の一角を占め、あらたな波及効果が現象となって表れている。そんな印象を受けた。そういえば大震災直後、恵比寿や目黒でも「パークリュクス」の分譲があったように記憶しているが、すでに売れてしまったのだろうか。一原さん曰く、「どちらも80戸以上の規模の物件でしたが、あっという間に完売しました」。坪単価は恵比寿が@約380万円、目黒が@約330万円。100平米なら億ションの相場単価である。
神楽坂のようなレアケースを除けば、シングル向けマンション立地は、見極めが難しいものがじつは少なくない。えてしてそれは、商業地域にかかることが多く、どちらかといえば「ビルには厳しかった土地」の印象が強い。しかし都心で利便性が良いため単価はそこそこ高くなる。これまで阻んでいた3,500万円の壁が、企業努力や単身市場の成長をもって突破されるとなると、都心地価の下支えになると捉えることもできよう。ひそかな盛り上がりを見せるコンパクトマンション市場に今後も注目していきたい。
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