防災の配慮とその伝え方
「パークシティ武蔵小杉ザ・グランドウイングタワー」は2月から集客をはじめ、来場総数は2,500件に達する。業界に詳しい人なら、この数字を聞いてまず驚くのが申込率の高さ。つまり、2,500件に対して369件も購入意思を示した、その率(これを業界では「歩留まり」といっているが)14.7%。目立つ場所で足の運びやすいところにモデルルームを構えた大規模物件において、この数字は相当な好成績といえる。決断させる理由があるはずだ。坪井所長が挙げた2つ目の要因が「防災」である。これは具体的な対処を列記した方がはやいだろう。まず停電になっても、エレベーターを3基*72時間(3日間)稼働させることができる非常用発電設備を用意した。さらに共用廊下の照明や専有内のリビングにも非常灯を設置。上層階に取り残される不安は軽減されるだろう。*ちなみに川崎市の指導では4時間。
次に水。今回のタワーでは1世帯に付き1,000リットルの水を確保。内訳はこうだ。各階の備蓄庫に1世帯当たり4日分のペットボトル。満水時の受水槽には停電時にも1世帯当たり500リットルの供給量を確保。さらに各階には、発電機で作動する非常用水栓設備を設置している。他にもエコキュート(タンクに300リットル)や雑用水槽で雨水を貯める、井戸水をくみ上げるポンプなど可能な限りの生活用水補給設備を施した。
建物構造は制振を採用。防災マニュアルも万全。そして、防災面で特筆すべきがモデルルームでのガイダンスとパンフレットだ。老若男女を問わず、伝わりやすい表現方法をとっている。東日本大震災以後、たび重なる余震もあって「妻が極端に揺れを怖がるようになった」という話をよく聞く。女性にも安心感を持ってもらえるような伝達の工夫が求められているのだ。いくらアイデアが優れていても、利用する側が解釈できなければその技術は実を結ばない可能性がある。
2棟の経験をいかして
さて、最後になったが住空間の評価に入ろう。建物は逆梁アウトフレーム工法である。寝室の画像をご覧いただくと、上部に梁がなく、バルコニーとのつながりがタワーらしからぬ開放感を生んでいることに気付くだろう。リビングダイニングも同様。梁を室内に一切出していないため、タワー特有の圧迫感がない。たしかに眺望との心理的な距離感は広がるかもしれないが、外気も取り込み、落ち着いて暮らすにはこの方式がベターではないかという気がする。また間取りでは、居室間を引き戸でつなげる工夫も積極的に取り入れた。タワーマンションの各部屋を可能な限り開口部に面するように配置すると、どうしてもうなぎの寝床のような長細い形になるのだが、思い切って開放することで回遊型の柔軟な使い方ができそうだ。これも、ある程度「家族の人数を予測できたからこそのプランニング」(同)。過去2棟の経験をいかした作り込みである。
さらにいうならば、前2棟に比較して今回は2LDKの比率を上げている。3LDK、4LDKとのバランスが4:4:2。この割りかたが坪単価の上ぶれに少なからず寄与していることも考慮しなければならないだろう。また、5階部分で駅と直結していることも3棟目の利点。丸の内や大手町、西新宿の超高層あたりに勤める方なら(もちろんオフィスまでの環境によるが)雨の日でも傘なしで通勤できる可能性が高そうだ。
【取材協力】
三井不動産レジデンシャル
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