青田売りが引きおこす矛盾

住友不動産「シティテラス下目黒」の模型

住友不動産「シティテラス下目黒」の模型

今回は、供給者側のことを書いてみようと思う。マンションデバロッパーについてだ。これまで何度も述べてきた通り、新築分譲マンションは青田売りが主流。工事中に、販売をはじめてしまう売り方である。建物が竣工するまでに売り切ってしまい、完成在庫のない状態を良しとする。これが、いわば「業界の共通認識」。

一方、これもまた繰り返し触れてきたように、マンションの資産性は、建物の「外観デザイン」と「エントランス」に因るところが大きいとされている。佇まいの印象、そして足を踏み入れたときの雰囲気こそがイメージを決定づけるということ。ホテルなどになぞらえて考えれば、なるほどそうかと頷いていただけるかもしれない。

買い手の立場から見た場合、この2つの事実は一見矛盾しているといえる。なぜなら、資産性に留意して物件を選びたいのに、大事な部分をパース(CGなどで作成した完成予想図)でしかチェックできないから。これは売り手の立場からも同じことがいえる。外観と共用部の高級感を意識して設計したにもかかわらず、それを販売促進に活かしきれないからだ。

3割は完成してから売れば良い

住友不動産「シティテラス下目黒」のモデルルーム

住友不動産「シティテラス下目黒」のモデルルーム

この矛盾を解消するために、あるデベロッパーが、業界の常識を打ち破る宣言をした。「竣工完売を良しとしない」住友不動産である。同社のマンション事業の責任者である岡田執行役員は、「竣工時点で7割程度売れているくらいがちょうどいい。あとは実際の状態を見てもらって、残り3割をさばいていく。外観とエントランスには力を入れてつくっているから実物を見て欲しいという思いがある。だから、竣工在庫を“売れ残り”とは捉えていない」。

この発想は、10年くらい前に業界内で話題になったが、今だに同社ならではの考え。他社で追随するという話は聞いたことがない。そして、住友不動産は昨年さらなる独自戦略を打ち出した。「常設のマンションギャラリー」である。

マンションのモデルルームは、現地に近い場所で土地やビルを借り、完売もしくは建物が完成するまで、そこにモデルルーム(販売センター)を設営して、販売活動を営む。枠組みはプレハブだが、内装は数千万円の決断をする場所に相応しい雰囲気の良い空間をしつらえる。ときにそれは敷居の高さとなってしまうこともあるが。

この「作っては壊す」繰り返しをやめてしまおうというのが住友不動産の新戦略。山手線のターミナル駅に5か所(秋葉原、田町、渋谷、新宿、池袋)、「総合マンションギャラリー」を設け、基本的には首都圏すべてのマンションを扱う。居住地や勤務地に一番近いところに立ち寄ってほしい、という発想だ。