損害保険/損害保険関連情報

東日本大震災 損害調査の現場から その1(2ページ目)

東日本大震災では、損害保険会社から多くの社員や鑑定人が現地に赴き、損害調査を行いました。地震保険の損害調査の歴史上これまでなかった規模の地震だっただけに、保険会社の皆さんにも大変なご苦労があったようです。今後私たちが地震保険を請求する時に慌てたり困ったりしないよう、知っておきたいことを損害調査の担当者、Fさんにインタビューしました。とても興味深いお話です。

清水 香

執筆者:清水 香

火災保険の選び方ガイド

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被害状況がわかる写真があると、手続きが進めやすい

清水:損害認定の現場も想定外、初めての経験だったわけですね。

Fさん:そうです。ですから今後の地震後の請求をスムーズにするために、とにかくお願いしたいのは1つだけ。建物・家財、いずれもできれば数多くいろんな角度から損害の状況がわかる写真を撮っておいてほしいです。なににせよ写真があれば「こういう状況だった」ということを確認でき、保険金支払いの計算を進めることができます。

清水:今回、写真を撮られていた契約者の方はいましたか?

Fさん:被災地では、写真を撮っていた方は少数でしたね。建物であれば、壊れた後どう直したかといったことは、修理した業者の方から話を聞くこともできなくはないですから、損害の状態だけ写真を撮っておけば、後からでもどうにか確認は可能ですからね。ぜひ写真を撮っておいてほしい。

あるいは、身の安全が確保できたらできる限り早く、サービスセンターに損害の連絡をしてくれたら助かりますね。連絡をいただければ、図面を用意しておいてくださいとか写真を撮っておいてくださいとか、お話しできますからね。
 

損害調査は、その場で区分が判定されることも

なににせよ、損害状況の写真を撮っておこう

なににせよ、損害状況の写真を撮っておこう

清水:損害認定そして保険金が支払われるまでは、どのような流れになりますか?

Fさん:地震保険の場合、一般的な保険のように壊れたものの修理見積もりを確認し検討するということがないので、損害認定から保険金の支払いまで時間はあまりかかりませんね。地震保険では、もともとあったものがどれだけ壊れているかの判断で損害認定が決まりますから。

清水:具体的には?

Fさん:損害発生のご連絡をいただいたら、お客様に訪問のアポイントを取り、社員、鑑定人または建築士などが後日訪問します。損害認定は当社はおおむね1時間以内ぐらいで行っていましたが、ケースバイケースです。長くかかる場合には3~4時間ぐらいかかることもありますね。その場で損害区分が判定されるケースも少なくなかったですね。

清水:契約者の方と一緒に損害箇所を確認してまわると聞きましたが。

Fさん:そうですね。お客様と建物の中と外を一緒に回ります。室内などに勝手に中に入るとプライバシーの問題もありますし、危なくない範囲で一緒に来てもらいますね。さすがに、屋根に上ったりはしませんけど(笑)

判定した損害区分をお話して、ご理解いただけたら保険金請求書をその場で書いていただき、そのまま持ち帰ります。ですから書類がうまくまわれば、1週間かからず保険金が振り込まれる感じですね。

清水:早いですね。今回の地震保険金の支払いは、業界全体でも3カ月で1兆円が支払われるというスピードでしたね。
 

地震保険は、建物や家財の修理費用ではないのに……

Fさん:現地での損害調査のスタートが出遅れたと言いましたが、だからこそできる限り早く保険金を支払えることを目指して損害調査を行ってきました。結果としてかなりいいペースで進めることができたと思います。「こんなに早く払ってもらえて……」と、お客様には本当に喜んでいただけました。

清水:逆に困ったな、というケースはありましたか?

Fさん:損害調査に出かけて、お客様がしばしば勘違いされていた点が、建物や家財の修理費用が地震保険金として支払われるという勘違いです。特に建物に関してはそうでしたね。「修理費はこれだけかかるのに、これしか出ないの?」といったお話になりがちでした。

清水:やはり契約時に、地震保険をよく理解して契約することが大切だということですね。地震保険はそもそも損害額をカバーするものではなく、損害に応じてあらかじめ決められた3段階の保険金が支払われることを知らないと、イザという時に本当に困ってしまいますね。(その2につづく)


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