絵になる住宅街
これまで、いろんな街を訪ね、たくさんのマンションを見てきた。地域としては、やはり都心が多く、高級マンションの比率が高い。このサイトのガイドも7年目にはいった。これまでに撮影した街や建物の写真は、かれこれ数千枚になるだろうか。ときに、たまった画像を整理していて思うことがある。撮った本人さえ驚くほど枚数の多い街があることに。このアングルは押さえておこうという気持ちが自ずと出てしまい、余計にシャッターを切っているのだろう。どのような場所かといえば、シンプルに「絵になる景色」に出会ったときだ。
もう少し具体的にいうと、「空が大きく、緑豊かな風景に溶け込んだ高級マンション」。付け加えるならば、ちょっとした坂道や緩やかなカーブがあるとその数はさらに増えざるを得ない。なぜなら、行きと帰りで目に映るものが違うから。こういう所なら、長く住んでも飽きないだろうなと思う。そしてこの感覚は、マイホームを構えるロケーションの大事な要素のひとつになる。季節や時間、あるいは目線の角度の違いで見晴らしが異なる愉しさは、言葉だけではなかなか表しきれないものがある。
「南麻布4、5丁目」
では実際、どんな街が該当するのか。例えば「南麻布4、5丁目」などはその筆頭にあがるのでは。街の核となるのが、広大な緑「有栖川公園」。その高台の上には運動場やテニスコートがあって、風景の見通しが良い。大使館の存在も特色のひとつである。ドイツ、フランス、スイスといった欧州の大使館が点在している。「ホーマット」シリーズをはじめとしたヴィンテージマンションも数多い。通りから1本入ったところ、やや狭い坂を登ったところなどに味わい深い建物を見つけることができるはずだ。じつに趣のある街並みである。
高級住宅街だからといって、大豪邸が居並ぶような張り詰めた空気が漂っているわけではない。「広尾駅」周辺のオープンカフェやスーパーでは、外国人客が多いことを除けば、住宅街でよく見る風景に何ら変わりはない。学校や病院が身近にあることも暮らしやすいイメージに貢献していると思う。
さて、ここで下のグラフをご覧いただきたい(拡大可)。都心の人気立地「3A」の町丁目別の昼夜間人口密度をあらわした棒グラフだ。20,000人/平方キロメートル以下の町に赤い星印をつけているが、「南麻布4、5丁目」が際立って低いことがわかるだろう。
これはオフィスビルや背の高い集合住宅が少ないこと、1戸当たりの住宅の面積が大きいこと、そして緑地が豊かなことを意味している。都心でありながら、オンとオフを完全に切り離し、落ち着いた生活が過ごせる条件が整っているのだ。あまり新築マンションの出ない場所だったが、間もなく供給(販売)がはじまる。かねてから話題に上っていた、フランス大使館旧館跡地プロジェクト「プラウド南麻布」である。