全粒粉のパンのおいしさの秘密

全粒粉、それも100%といったら栄養価が高く、食物繊維も豊富で健康に良いかもしれないけれど、口の中でボソボソするのでは、などと少しは思っていたのです。しかしそれはすぐに覆されました。しっとりとして口解けがよいのです。それはどうやらパンに加えている水の量に鍵があるようです。
松崎太さん

松崎太さん

「戦後、ドイツでも機械化が進んで、扱いやすいようにとパンの水分量を少なくしているし、発酵時間を減らすためにイーストフード(添加物)が多用されるようになってきています。どこもそういうものなのかと思ったら、行列ができているパン屋さんがあって、そこのパンは昔ながらの製法で水分量が多く、しっとりしていたんです。昔は加水率が高く、生地を柔らかくして、発酵時間もきちんととってパンを作っていたんですよ」。
パンを分割

パンを分割

温故知新。パンの進歩の方向性は知恵を使っていた昔にあると思う、という松崎さんは古書店を巡り、昔の資料を原書で読み、日本へも専門誌を取り寄せています。そして水分量の話は続きます。

「全粒粉は水をゆっくり吸うので、先の様子を見越して生地を仕込む必要があります。加水はだいたい89~90%かな。湯種(小麦粉の一部をお湯で溶く製法)でも調整しています。もともとヨーロッパで行なわれていた、先人の知恵ですね。吸水は麦によって違うし、年によって違うんですよ」。
午前2時頃からお昼前まで、工房で働く

午前2時頃からお昼前まで、工房で働く

松崎さんは仕入れた玄麦を毎日、翌日に使う分だけ製粉しています。挽きたては熱を持っているため一日置くのですが、時間が経てば酸化してしまうからです。

挽く前に、精米機を使って麦の外皮を磨くような感じで、ジャリジャリした食感にならないようにする方法は、今はなきブノワトンの高橋さんに学んだといいます。そして粉は細挽きにすると、香りが良くなるのだそうです。
フォルコンブロート(640円)

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フォルコンブロート断面

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